しかし信氏親子らは、こうした逆境に怯むことはなかった。かつての一家離散、諸国を彷徨 (さまよ)い自害も考えた地獄の如き日々。それらに比べれば、たとえ荒れた田畑だろうと、今ここに、確実に生活を営める地を与えられているのだ。以後、使用人や足軽衆、新たに入植した百姓衆らとともに、懸命に田畑の復旧に努め、信氏も連日、自ら鍬を握り続けた。その努力の甲斐あって、田畑はこの十年の間に目覚ましい回復を見せ、米の…
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小説『タケル』【新連載】中村 東樹
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小説『縁 或る武家のものがたり』【第2回】伊藤 真康
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