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  1. 小説
    『心ふたつ』
    【第13回】
    高田 知明
    1位 1

    想い人との結婚は出来ぬと諦めた。しかし婚姻の場に現れた綿帽子で顔を隠したその女性の正体は...!!

    日が西の空に傾き始めた暮れ六つ時、佐吉は、紋付羽織と袴姿に着替えさせられた。腰には先祖伝来の、宮下藩の殿様から拝領したという脇差を挟んだ。その姿で大広間に向かうと、部屋も庭も既に来客であふれかえって…
  2. エッセイ
    『あなただけが消えた世界』
    【第22回】
    上島 薫
    2位 2

    「子どもが大きくなったら」「おじいちゃんおばあちゃんになったら」些細な夢がたくさんあったのに。私と幼い息子を残して夫は…

    そして当時、まだ4歳の年中さんの息子なのに、小学校の入学式には何を着ていこうかと、すでに楽しみにしていて、私はさすがに気が早すぎるなと笑いながらも、そんな一樹を見ていて幸せだと思った。本当に息子が大…
  3. 歴史・地理
    『嵌められた光秀』
    【新連載】
    根木 信孝
    3位 3

    史上最も不思議な出来事の一つ「本能寺の変」―織田信長をその家臣の明智光秀が謀反を起こして討ったと伝えられているが…

    歴史はその後の権力者によって歪められる。権力者によって歪められたその歴史から本当の史実を探るのは容易なことではない。権力者に都合が悪い物証や書物はことごとく破壊されたり焼却され、人間は抹殺される。あ…
  4. 小説
    『眠れる森の復讐鬼』
    【第2回】
    春山 大樹
    4位 4

    「歩けるようになるのは難しいでしょうねえ」信号無視で病院に運ばれてきた馬鹿共は、地元の底辺高校時代の同級生だった。

    患者は苦しそうに目を閉じているのでそれに気づいていない。一番目の頭部外傷患者が中村大聖(たいせい)、二番目の心タンポナーデの患者が石川嵐士(あらし)、偶然にも二人とも蒼が卒業した高校の同級生、しかも…
  5. 小説
    『曽我兄弟より熱を込めて』
    【第17回】
    坂口 螢火
    5位 5

    手を突いて承ったものの、幼い子供らの首を斬る酷い役目。姫を奪われ、初めての子を殺された怨念はすさまじかった。

    時は、頼朝が北条政子と出会う以前。まだ一介の流人に過ぎなかった頃に遡(さかのぼ)る。彼は祐親の娘の八重姫と運命的な恋に陥った。しかし――平家に仕える伊東の姫と、源氏の棟梁の間柄。当然祐親がこれを許す…
  6. エッセイ
    『あなただけが消えた世界』
    【最終回】
    上島 薫
    6位 6

    容態が急変した夫のもとに駆け付けると、「脳は再出血によりもう機能していません。心臓は長くはもたないと思います」と…

    私はその日、ようやく少し安心感が増してきていて、凪人が待つ自宅へと帰って、夕食を食べお風呂に入り、凪人と一緒にテレビを見ていた。その時「容態が急変しました」という連絡が入った。私は、その言葉を聞いた…
  7. エッセイ
    『あなただけが消えた世界』
    【第19回】
    上島 薫
    7位 7

    夫から誕生日にサプライズ…「次は、40歳の時だね」だけど、それは叶わぬ夢となった。私は34歳で一人になった。

    私自身、母親としてのモデル、お手本がない中での育児。だからかえって自分の中で創り上げた完璧な母親像だけが膨れ上がり、理想だけが一人歩きして苦しむこともあった。けれど、今振り返れば、いろいろ頭の中で難…
  8. 小説
    『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様[2024年話題作ピックアップ]』
    【第29回】
    武 さき
    8位 8

    ガードレールに座ったまま、子どもが道路側に落ちた!とっさに抱きかかえて助けた子の祖父は、あの有名な…

    又々、大事件。ある日、夕食の帰り、手をつないで横断歩道で信号待ちをしている時、子供がガードレールに座っているのが目に入った。次の瞬間、後ろ向きに道路側へ落ちていく。トラックが近づいていて私は「きゃー…
  9. 小説
    『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様[2024年話題作ピックアップ]』
    【第30回】
    武 さき
    9位 9

    亡き妻にそっくりな女性。諦めきれず、「奪ってやろう」と思った。ストーカーのように追いかけ、一人になった時に声をかけたが…

    吉岡さんと山本さんの話。TI会の前日吉岡社長より、山本さんに電話。「山本、金曜日にここへ来るだろう? 何時頃着く予定?」「どうした。珍しいな」「山本に是非、会ってもらいたい凄い人がいる。明日の六時に…
  10. エッセイ
    『あなただけが消えた世界』
    【第23回】
    上島 薫
    10位 10

    「また明日も来るからね」と、握っていた夫の手を離した…。その日が、最後の日になった。面会を始めて4日目のことだった。

    その期間、もしものことを考えると頭が狂いそうになった。正気を保つことさえままならなかったが、凪人が夏休みに入りそんな状態ではいけないと思った。何より、私が泣いたり不安な顔をしていたら凪人を不安にさせ…
  11. エッセイ
    『あなただけが消えた世界』
    【第20回】
    上島 薫
    11位 11

    母とは二度と関わらない、縁を切ろう。母にとって都合のいい娘で居続ける、親子ごっこは懲り懲りだ。頭では理解していたが…

    こうして私は30歳を迎え、全力で凪人と向き合う育児をしていく中、突然立てないほどの下腹部の痛みに襲われた。検査の結果、右の卵巣に大きな腫瘍があることが分かった。即入院、翌日には手術と決まったが、まだ…
  12. 小説
    『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』
    【第24回】
    行久 彬
    12位 12

    初めて身も心も許した男。小遣い­をせびるようになり、「証を見せろ」と無理難題を言ってきて…

    「昼休みに紅葉の話で盛り上がったね。今度どこかに紅葉でも見にドライブしようと思とんの­やけど君も行かへんか?」と誘いを掛けて来た。マー君は日頃から不良のような雰囲気を漂わせており職場での評判もあまり…
  13. 小説
    『眠れる森の復讐鬼』
    【第14回】
    春山 大樹
    13位 13

    「復讐のために人工呼吸器を外したって言いたいのか?」激しい熱傷に、植物状態の元同級生。その夜、出歩けるはずのない彼女が目撃されて...

    「顔を見たのかい?」「ううん、顔も包帯でぐるぐる巻きだから。でも、本当なのよ、信じて」一夏は両手で顔を覆って嗚咽した。何とか助けてあげたい気持ちになったが、海智は彼女の言うことが俄かには信じられなか…
  14. 小説
    『溶けるひと』
    【第2回】
    丸橋 賢
    14位 14

    歯医者への相談事は、息子の起立性調整障害について。疲弊しきった母親は青ざめた顔で話し始める「とても元気な良い子だったんですが、急におかしくなってしまって......」

    伊波に案内され、体を縮めて入ってきたのが川瀬実知(かわせみち)だった。椅子を勧められて座ったが、俯(うつむ)いたままだ。息子の難しい問題に悩み続け、思い切って相談に来たのだが、あの先生は恐いと評判で…
  15. 小説
    『曽我兄弟より熱を込めて』
    【最終回】
    坂口 螢火
    15位 15

    用意した死に装束を、我が子に着せる。まだこんなに小さいのに、斬首だなんて…私が身代わりになって死にたい!

    青天の霹靂とは、まさにこのこと。聞いた母の驚きは尋常のものではない。「エ――エッ! 何と、何とおっしゃいます!」声さえ別人のごとく裏返って、「厭です! 厭です! 渡しません、断じて……」絶望的な悲鳴…
  16. エッセイ
    『あなただけが消えた世界』
    【第21回】
    上島 薫
    16位 16

    母との絶縁、パニック障害、アルコール依存…そんな中で、息子は4歳になっていた。いっそ、私を責めたて罵倒してくれたらと…

    しかしその後〈またあの発作を起こしたらどうしよう〉という不安や恐怖が常に念頭にあるせいもあってか、パニック障害はあらゆる場面で起きるようになっていった。藁にもすがる思いで精神科を受診し、発作を予防、…
  17. 小説
    『溶けるひと』
    【新連載】
    丸橋 賢
    17位 17

    「変だな」歯医者の診療開始30分前。背中を丸め、困り果てた中年女性の姿が待合室に見える。歯科医に相談に来たのは、"不登校の息子"の母親?

    九時半に診療が始まるみつる歯科医院の朝は掃除と準備で皆が忙しく動き回り、バタバタしている。高崎駅の東に広がる住宅地に位置するみつる歯科から望む赤城山の長くゆったりした裾野は、いつ見ても美しい。十月も…
  18. 小説
    『幸せを呼ぶシンデレラおばさんと王子様[2024年話題作ピックアップ]』
    【第25回】
    武 さき
    18位 18

    「やり直したい。帰って来たの、あなたの所へ…」夫が抱き合っていた女性は元カノだった。びっくりしていたら、夫と目が合って…

    三か月後、TI会当日、近藤さんのホテルで二時待ち合わせ。時間通り四組会員集合。「今日の会の予定はブティックで奥様達は好きな物を好きなだけお買い物をしてください。その間、男子会します。女子会が始まった…
  19. 小説
    『眠れる森の復讐鬼』
    【第15回】
    春山 大樹
    19位 19

    彼女の姿は包帯で嵩ませても、とても成人女性とは思えぬ程小さくあまりにも華奢だった。植物状態で眠るいじめ被害者と高校時代以来の再会。

    一体、これが本当にあの信永梨杏なのか。海智はあまりの衝撃に立ちすくみ震えた。最後に見た彼女の姿はもう少し大きく、立派だった気がする。今の彼女の姿は包帯で嵩ませても、とても成人女性とは思えぬ程小さくあ…
  20. 小説
    『白寿の記憶』
    【最終回】
    小倉 敬子
    20位 20

    苦難を乗り越えて生まれた孫は嫌われ者。退院して家に帰るも、お義母さんは孫を抱くこともあやすこともせず......

    「よくがんばって、一人で来ましたね。もう大丈夫、あとは任せてください」という先生の心強い言葉に救われた思いがしました。日頃から先生には我が家の事情を話しており、緊急時にはよろしく頼むと主人からもお願…