昨日は回復基調だったが、鎮痛剤が効かなくなった。頭蓋骨周辺の痛みも激しく重なり、昨夜は眠れない夜を過ごした。睡眠不足で妻は衰弱。精神的にも弱り「一生治らないよね」とつぶやきながら妻は泣いた。視覚の乱…
人気記事ランキング
-
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第6回】桜木 光一
1
「なぜ投身前に見つけてあげられなかったのか?」自問自答は果てしなく続き、何度も悔やんだ
-
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第11回】松谷 美善
2
マッチングアプリで出会った男に騙され監禁。そこには複数の女性がいて、上の階からは「お願い、殺さないで」と懇願する声が…
強い恐怖を感じながらも、あたしは言った。「あたしトイレに行きたいの。それに家に帰りたいわ」男はあたしの頬を一発張った。「逃げられると思うんじゃない。おまえにはいろいろ役に立ってもらわなきゃなんねえん… -
小説『店長はどこだ[人気連載ピックアップ]』【第6回】八十島 コト
3
突然死した妻の相手は誰だった?...自分の不倫はさておき、弔問客の中からやましい男を探し出す。
アルバムを順番に見ていくと、一番新しい物でも、去年の四月二十八日だった。友だちの伊藤千絵と青森の弘前に桜を見に行った時の情景だった。写真はそれで終了しており、次のページ以降にはまだ収容するスペースが… -
小説『お嬢様の崩壊』【第2回】いけだ えいこ
4
四十歳を過ぎてもマイホームも持たない団地妻になっているとは思わなかった…想像していたのは左ハンドルの高級車に乗って名門小学校に子供を送り迎えしている自分だった
まさか自分が四十歳を過ぎてもマイホームも持たない団地妻になっているとは、若いころには想像もしていなかった。学生時代に教習所に通って車の免許を取ったときに想像していたのは、左ハンドルの高級車に乗って名… -
小説『泥の中で咲け』【第10回】松谷 美善
5
「気がつくべきだった」アプリで知り合った男を信じた結果…
退屈していた。とにかく毎日が退屈だった。夫は今度、いつ帰ってくるのだろう。盛りのついた猫のように、ただ異性を求め続けた。優し気な言葉、写真で見る限り華奢な男。この人なら大丈夫かな。直感でそう思った。… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第5回】桜木 光一
6
「死んではならぬ」10分おきに心拍数の異常を示すモニターの警報が鳴り続けた…
昨夜は医療用麻薬を投与し、鎮痛剤を服用し続けた。麻薬をもってしても効かず、妻は朝まで痛みと闘った。その後、力尽き睡眠に入った。今日は様々な看護師が部屋に出入りした。全ての方々のネームプレートを見ては… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第16回】松谷 美善
7
いつの間にか異性に対する感情になっていた彼から「今月、あと二十万あれば、僕ノルマクリアなんです」とお金を無心され…。
坂本曜は、それから週に一度はわが家を訪れるようになった。相変わらずの人懐こい笑顔で、「近くまで来たんですが、なにかお困りのことはありませんか?」と微笑む。こちらがなにか頼まなければ済まない雰囲気に持… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第9回】桜木 光一
8
夜、暗い廊下に出て「私の命と引き換えに妻を助けてほしい」と丸い月に何度も祈った
脊髄の医師から、座る訓練のためオーダーメイドのコルセットの作成が必要との説明を受けた。胸囲や身長を計測。自動車のシートのように頑丈な妻を守るコルセットは、月曜日に完成するらしい。平衡感覚も失っている… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【新連載】桜木 光一
9
父の通夜に現れなかった妻。自宅階段の手すりに白い紐が結ばれていて…
妻の命を守るためにご尽力頂いた皆様に感謝申し上げます。医療機関の皆様には特にお礼申し上げます。自傷行為者の介添人として私自身も入院させて頂いたことは、妻の励みになりました。心から感謝します。私が疲弊… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第2回】桜木 光一
10
「俺をおいて逝くな…」厚い扉の先にいた妻は無数の管に繋がれていた…。
■2021年10月20日午前6時頃、散歩中の老夫婦が変わり果てた妻を発見して下さった。警察と救急隊が現場に急行して救急病院へ搬送した。周囲には朝陽に輝く秋桜が静かにゆれていた。 私の携帯に警察から連… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第3回】桜木 光一
11
妻の自殺未遂の原因は夫である私のDVと思われつらい日々。ある日廊下で号泣すると…
■2021年10月21日「呼び戻してあげて!」看護師は初めて、私に対して語気を強めた。私は震える声で「三途の川だから行っちゃダメ」と耳元で繰り返し伝えた。その声は徐々に大きくなり、最後は「川の子供よ… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第4回】桜木 光一
12
8時間の手術、拒絶反応が発生するとすべてが無になる それでも決断を悩む理由はなかった
昨夜は10分おきに痛みが発生して、互いに睡眠をとれぬまま朝を迎えた。私は保険の内容を確認した。自傷行為による怪我は保険適応外らしい。精神的にも金銭的にも首に縄が食い込む感覚がした。・来月請求される1… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第12回】松谷 美善
13
監禁されているここから絶対に生きて帰りたい…。ある明け方、今だ!と直感し、そっと音を立てないように、立ち上がったところ…
あたしは液体を飲まされて、しばしば気を失った。そのうちに感覚が麻痺して、今が何日なのか、そして昼夜何時頃なのかもわからなくなっていた。でも、こちらが冷静でさえいれば、必ずチャンスはくる。そして、それ… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第7回】桜木 光一
14
「いてくれれば、それだけでいい。いつか一緒にお家に帰ろう」叶わないかも……心の中のつぶやきに涙が流れた
昨夜から痛みとしびれの抑制の薬を強めに処方して頂き、夜中は3時間の睡眠を確保させてあげた。痛みの根源が脊髄か骨盤なのか、判断はまだできないと医師から説明を受けた。痛みの沈静化ができれば、布団の上で座… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第8回】桜木 光一
15
夜通し壁を突き抜けて響く死の縁からの悲鳴。妻は激しい腹痛と左脚の痛みに襲われ気を失った
「社長、昨日はお見舞いをありがとうございました。会社全員の色紙のコメントを拝読させて頂きました。本来は一人一人に連絡してお礼を申し上げたいところです。ありがとうございました」昨夜も腹痛と左脚の痛みが… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第10回】松谷 美善
16
マッチングアプリで出会った男性と夜の11時に待ち合わせ。渡された紙コップを一気に飲み干してしまったところ、記憶がなくなり…
退屈していた。とにかく毎日が退屈だった。夫は今度、いつ帰ってくるのだろう。盛りのついた猫のように、ただ異性を求め続けた。優し気な言葉、写真で見る限り華奢な男。この人なら大丈夫かな。直感でそう思った。… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第10回】桜木 光一
17
当たり前にできた「寝る、座る」が妻には地獄の苦しみに…毎日が限界との闘い
昨晩も深夜零時から妻の両脚が痛み出した。リハビリの医師から「少しずつ脳の神経を痛みだけの世界からそらしてあげる工夫が必要です」と言われたことを思い出した。深夜病院の外にあるコンビニに走った。外に出る… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第13回】松谷 美善
18
ある朝、僕の日常は一変する。工場に出勤したときに大騒ぎになっていた。あるトラブルの原因を僕のせいにされ…
ある朝、僕の日常は一変する。工場に出勤したときに大騒ぎになっていた。ネジ製造工程のラインが止まっていた。その事態が、こともあろうに僕の責任になっていたのだ。製品のネジの溝のわずかなズレが、僕の責任だ… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第11回】桜木 光一
19
二度と立てないかもと諦めていた妻が…「立ったよ! 奇跡だ! 凄いよ!!」と叫び、下を向き泣いたリハビリ医師
腰を守るコルセットが到着した。「妻をしっかり守ってくれよ」とその相棒に頼み、丁寧に触れてみた。リハビリ医師の介添えのもとで装着して、個室内で車椅子に座る訓練を実施した。装着に5分。車椅子への移動が5… -
小説『店長はどこだ[人気連載ピックアップ]』【第7回】八十島 コト
20
やはり妻はシた側だった?…死に際に発した言葉は素性の知れない「テンチョウ」。
日曜日の夜に大阪のマンションに戻り、翌日の月曜日から、いつものように出勤した。達郎は、部下を伴って昼食に出た。途中の大阪駅前第二ビルと第三ビルの間で、交通事故があった。ちょうど、救急車が来て、けが人…
-
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第6回】桜木 光一
1
「なぜ投身前に見つけてあげられなかったのか?」自問自答は果てしなく続き、何度も悔やんだ
昨日は回復基調だったが、鎮痛剤が効かなくなった。頭蓋骨周辺の痛みも激しく重なり、昨夜は眠れない夜を過ごした。睡眠不足で妻は衰弱。精神的にも弱り「一生治らないよね」とつぶやきながら妻は泣いた。視覚の乱… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第5回】松谷 美善
2
もう、手の施しようがないと言われた母。離婚した父を頼ったが、面倒臭そうな反応をされ…。そしてたった四日で母さんは死んだ
ここからバスと電車を乗り継いで、五十分ほどかかるその病院は、お世辞にもキレイとは言いがたかった。まだ人に聞くのがためらわれて、受付あたりをうろうろしていた。そこへ年配のナースが現れた。「坂本さんです… -
エッセイ『59才 失くした物と得た物[コンテスト特集]』【新連載】有村 月
3
ダンナが死んだ―まさかの現実。「1度きりの人生、こんなんでいいの?」と熟年離婚は考えていたけれど…
ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝… -
エッセイ『振り子の指す方へ』【第17回】山口 ゆり子
4
あの日、同じように妻を抱きしめていたのなら…。泣いている義姉をソファーに横たえ、そして…
静かに抱きしめ返してくる亜希子の背中をさすりながら、春彦は郁子とよく似た亜希子の温かさが二年の間にうらぶれた心をほぐしていくのを感じていた。あの日、同じように郁子を抱きしめられていたのなら、という思… -
小説『お嬢様の崩壊』【第2回】いけだ えいこ
5
四十歳を過ぎてもマイホームも持たない団地妻になっているとは思わなかった…想像していたのは左ハンドルの高級車に乗って名門小学校に子供を送り迎えしている自分だった
まさか自分が四十歳を過ぎてもマイホームも持たない団地妻になっているとは、若いころには想像もしていなかった。学生時代に教習所に通って車の免許を取ったときに想像していたのは、左ハンドルの高級車に乗って名… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第6回】松谷 美善
6
母さんが死んだ。葬式はできず、骨壺に入れられて戻ってきた母。父からは「かかったお金はお前が働いて返せ」と請求書を渡され…
葬式は出せなかった。直葬を行い、母さんは骨壺に入れられて戻ってきた。母さんの兄弟は誰も来てくれなかった。父さんは、火葬場までは来てくれたけど、俺に言い放った。「かかった金は、お前が働いて返せ。今日か… -
エッセイ『59才 失くした物と得た物[コンテスト特集]』【第2回】有村 月
7
「今週が山です。長くても2週間―」思いもよらない余命宣告に理解できずにいた私の背中を看護師長が無言でさすってくれ…
1ヵ月の入院が半月のびたが無事退院、私もそれに合せ3週間の休みをもらった。祈願だったラーメンも早速作って食べていたし、私の作った料理を「旨っ」と以前の様にたいらげた。すっかり断酒もし、元気になってい… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第4回】松谷 美善
8
ある日突然「お母さんが職場で倒れて救急搬送され、命の危険もある」と電話がかかってきて…
地方都市の公立の小中学校の教師は、みんなの前であからさまに、生徒の家の事情をポロっと口に出し、下手すると給食費を払っていないことまで平気でバラして、自分が生徒の気持ちを傷つけたことにも気づかない、自… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第5回】桜木 光一
9
「死んではならぬ」10分おきに心拍数の異常を示すモニターの警報が鳴り続けた…
昨夜は医療用麻薬を投与し、鎮痛剤を服用し続けた。麻薬をもってしても効かず、妻は朝まで痛みと闘った。その後、力尽き睡眠に入った。今日は様々な看護師が部屋に出入りした。全ての方々のネームプレートを見ては… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【新連載】桜木 光一
10
父の通夜に現れなかった妻。自宅階段の手すりに白い紐が結ばれていて…
妻の命を守るためにご尽力頂いた皆様に感謝申し上げます。医療機関の皆様には特にお礼申し上げます。自傷行為者の介添人として私自身も入院させて頂いたことは、妻の励みになりました。心から感謝します。私が疲弊… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第2回】桜木 光一
11
「俺をおいて逝くな…」厚い扉の先にいた妻は無数の管に繋がれていた…。
■2021年10月20日午前6時頃、散歩中の老夫婦が変わり果てた妻を発見して下さった。警察と救急隊が現場に急行して救急病院へ搬送した。周囲には朝陽に輝く秋桜が静かにゆれていた。 私の携帯に警察から連… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第11回】松谷 美善
12
マッチングアプリで出会った男に騙され監禁。そこには複数の女性がいて、上の階からは「お願い、殺さないで」と懇願する声が…
強い恐怖を感じながらも、あたしは言った。「あたしトイレに行きたいの。それに家に帰りたいわ」男はあたしの頬を一発張った。「逃げられると思うんじゃない。おまえにはいろいろ役に立ってもらわなきゃなんねえん… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第3回】桜木 光一
13
妻の自殺未遂の原因は夫である私のDVと思われつらい日々。ある日廊下で号泣すると…
■2021年10月21日「呼び戻してあげて!」看護師は初めて、私に対して語気を強めた。私は震える声で「三途の川だから行っちゃダメ」と耳元で繰り返し伝えた。その声は徐々に大きくなり、最後は「川の子供よ… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第4回】桜木 光一
14
8時間の手術、拒絶反応が発生するとすべてが無になる それでも決断を悩む理由はなかった
昨夜は10分おきに痛みが発生して、互いに睡眠をとれぬまま朝を迎えた。私は保険の内容を確認した。自傷行為による怪我は保険適応外らしい。精神的にも金銭的にも首に縄が食い込む感覚がした。・来月請求される1… -
小説『泥の中で咲け[文庫改訂版]』【第10回】松谷 美善
15
マッチングアプリで出会った男性と夜の11時に待ち合わせ。渡された紙コップを一気に飲み干してしまったところ、記憶がなくなり…
退屈していた。とにかく毎日が退屈だった。夫は今度、いつ帰ってくるのだろう。盛りのついた猫のように、ただ異性を求め続けた。優し気な言葉、写真で見る限り華奢な男。この人なら大丈夫かな。直感でそう思った。… -
エッセイ『59才 失くした物と得た物[コンテスト特集]』【第3回】有村 月
16
震える手で息子に連絡を入れ病院へ急いだものの「間に合わなかった―」最後にただ一声だけでも夫の声が聞きたかった…
その日、いつもの様に14時からの面会へ。痛むらしく話はできず。明日? 明後日? あんまり良くない気がして娘に電話して早目に孫を幼稚園に迎えに行かせ、テレビ電話をする。私たちの声かけには何の反応もみせ… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第7回】桜木 光一
17
「いてくれれば、それだけでいい。いつか一緒にお家に帰ろう」叶わないかも……心の中のつぶやきに涙が流れた
昨夜から痛みとしびれの抑制の薬を強めに処方して頂き、夜中は3時間の睡眠を確保させてあげた。痛みの根源が脊髄か骨盤なのか、判断はまだできないと医師から説明を受けた。痛みの沈静化ができれば、布団の上で座… -
小説『店長はどこだ』【第5回】八十島 コト
18
東京にいるはずの妻がなぜか金沢で事故死…「妻はどうして金沢にいたのだろうか?」残された不可解な謎
結局達郎は、JRを利用して、金沢に向かった。けれども、金沢第五病院に到着した時には、既に智子は死亡していた。享年三十四歳だった。警察の話では、智子は、歩行者用の信号機が青の点滅が終わり、赤になった時… -
小説『泥の中で咲け』【第10回】松谷 美善
19
「気がつくべきだった」アプリで知り合った男を信じた結果…
退屈していた。とにかく毎日が退屈だった。夫は今度、いつ帰ってくるのだろう。盛りのついた猫のように、ただ異性を求め続けた。優し気な言葉、写真で見る限り華奢な男。この人なら大丈夫かな。直感でそう思った。… -
エッセイ『朝陽を待ちわびて』【第9回】桜木 光一
20
夜、暗い廊下に出て「私の命と引き換えに妻を助けてほしい」と丸い月に何度も祈った
脊髄の医師から、座る訓練のためオーダーメイドのコルセットの作成が必要との説明を受けた。胸囲や身長を計測。自動車のシートのように頑丈な妻を守るコルセットは、月曜日に完成するらしい。平衡感覚も失っている…