【前回の記事を読む】「ねえ、残り1時間だから、歌はやめてソファで甘えたい」カラオケを切って部屋を暗くし、膝の間からもたれかかると…

Chapter 1

プラネタリウム付き天蓋ベッドでの秘め事

流星の腕の中にしっかりと抱きしめられている時、真由子は何だか流星が、白髪の年配の外国人のキリスト司教様に思えてきた。真由子自身は、若い修道女のイメージが浮かび上がる。

(流星くんが司教様で、私が若い修道女で、禁断の関係だった過去世があるみたいだわ……)真由子には少しだけ霊感のような不思議なイメージが浮かび上がる事がある。

特に流星と出会ってから、いろんな意味でスピリチュアルなものが降りてくるようになっていた。まるで 17、8歳の乙女の気分だ。そんな真由子の事を流星は何度も両腕で強く抱きしめた。

「シアワセですね……真由子さんといる時、本当に落ち着ける……本当に可愛い……」

流星は、真由子を抱きしめる力をさらに強めた。息も出来ないくらい強く……。そんな甘い時間が過ぎ、23時で予約した時間が終了した。

真由子のシンデレラタイムは終わった。

早足で新宿駅に向かい、山手線の電光掲示板を見るとそこには、

23時25分大崎止まり…… と書いてあった。品川駅で乗り換える真由子は、これでは帰れない。中央線も無理だった。

コロナ禍で電車の終電時間が早められていたのだ。

(どうしよう、これじゃ自宅に帰れないよ……)

いい年をして真由子は、心の中で半べそをかきそうになっていた。先ほどまでの流星とのベタベタ甘い気分が、一気に吹き飛んだ。

(どうにかしなきゃいけない……どうすればいいんだろう……流星にLINEで連絡して、電車がないから、1人暮らしの流星くんの部屋に泊めて欲しいって言いたいけど……) とっさに浮かんだが、真由子はそう出来なかった。

(お客様の私がセラピストの部屋に泊まらせて欲しい……そんなずうずうしいお願い、出来ない……)

真由子には流星にそれを頼む勇気はなかった。もしこの時、それをお願いして泊まりを流星に断られたら、真由子はもう少し早く流星に対して冷静になれたのかもしれない……。しかしそう出来ず、真由子は新宿のネットカフェを探し、西口からほど近いキレイなネットカフェに泊まった。

(流星くんと会っている時間は、まるで本当の彼氏や恋人と過ごしているようだけど……やっぱり私は彼のお客様という立場でしかない。それを超えて現実的に親しくなる事は、難しいんだ……)

ふと強烈に客とセラピストでしかない関係性を突きつけられ、夜通しネットカフェでそんな思いに囚われた真由子だった。翌朝、月曜日の朝、7時過ぎの通勤客と共に1人電車で湘南の自宅まで、帰った。