エッセイ 『親子すごろく』 【第3回】 朝丘 大介 認知症の母は、愛犬を玄関のドアノブにつないだことを忘れ、テレビに夢中になっていた。その間に愛犬の首には… 【前回の記事を読む】父は肺がん、母は認知症。2人を介護する僕には脳の障がいがあって、医師からは就職はまだ早いと言われている。そんな小説も以前飼っていた犬が死んでから書けなくなった。ほんの二か月前まではミルティという大人しいシェルティーがいたが、ミルティは死んだ。それも腑(ふ)に落ちない死にかたで。月に一度、東京の医大病院へ通院する日だった。ミルティを母に預けて病院へ行った。父はがん研に入院してい…
小説 『大人の恋愛ピックアップ』 【第176回】 津田 卓也 カフェで不倫相手の妻と対峙――「ねえ、奥さんのいる男とセックスするのってどんな気持ち? やっぱり興奮するの?」と聞かれ… 【前回の記事を読む】電車でぐったりしていた私に声をかけてきたのは、不倫相手の妻だった7カフェは混んでいた。平日の午後にこれだけの人がいるんだ、と今日子は思った。河合紗栄子は昼過ぎだというのにビールを注文した。そう言えば河合から聞いたことがあった。妻はアルコール依存症なんだと。今日子はレモンティーを飲みながら沈黙していた。何を話せばいいのかわからない。紗栄子が煙草に火をつけた。煙をゆっくり吐き出し…