小説 『記憶のなかで生きる』 【第19回】 厚切りゆかり 母を火葬した。骨壺を抱えて帰宅したとき、家は静まり返っていた。母の部屋に骨壺を置き「しばらくはここで一緒に暮らそう」と伝えた。 【前回記事を読む】「これ以上の延命は苦しめるだけ」と医師に言われ、横たわる母の手を握りながら「お母さん、どうしたい?」と問いかけた。母を火葬した。骨壺を抱えて帰宅したとき、家は静まり返っていた。「ただいま」誰も答えない。「お母さん、帰ってきたよ」誰も答えない。当たり前のことなのに、その静寂が胸を締め付けた。私は母の部屋に骨壺を置いた。遺影を並べ、花を飾った。「お母さん、ここにいてね。しばらくは、…
小説 『マーカスがおしえてくれた』 【最終回】 タカハシ バイロン お迎えした生後3か月の仔犬。押し入れからぬいぐるみを見つけて、無邪気に遊んでいた…実はそのぬいぐるみ、娘にプレゼントした… 【前回の記事を読む】「初めが肝心です。毅然とした態度でしつけをして下さい。」と言われたのに…つぶらな瞳で見つめてくるビーグルが可愛すぎて…昔、娘たちのために購入した猫とカバのぬいぐるみ。必要ないからと妻が昨夜押入れから引っ張り出してきた。すっかり気に入ったのか、猫のぬいぐるみに夢中で噛み付いているマーカス。そして、時々気がついたように私にじゃれついてくる。昨日まで、一人で過ごしていた時とは明らか…