エッセイ 『親子すごろく』 【第3回】 朝丘 大介 認知症の母は、愛犬を玄関のドアノブにつないだことを忘れ、テレビに夢中になっていた。その間に愛犬の首には… 【前回の記事を読む】父は肺がん、母は認知症。2人を介護する僕には脳の障がいがあって、医師からは就職はまだ早いと言われている。そんな小説も以前飼っていた犬が死んでから書けなくなった。ほんの二か月前まではミルティという大人しいシェルティーがいたが、ミルティは死んだ。それも腑(ふ)に落ちない死にかたで。月に一度、東京の医大病院へ通院する日だった。ミルティを母に預けて病院へ行った。父はがん研に入院してい…
小説 『差出人は知れず』 【第26回】 黒瀬 裕貴 突然「ちょっくら散歩いってくるわ」と言い出した祖父。防寒にしては“変”な格好だし、こんな真冬のこんな時間に…? 【前回記事を読む】10年以上も前に執刀した高齢患者の親族から連絡が…患者は既に鬼籍に入っているはずなのに、長い期間を経て…だが自分も似たようなものだった。お互い、もう若くない。今さら死を恐れることなどないが、せめて若菜が医者になったところを見てみたいと柄にもなく思ってしまった。「若菜には言うなよ」「なんでだ?」「当たり前だろう。もし俺が金を貸したとバレたら余計な気を遣わせるだけだ。俺は恩なんか着…