小説 『アイアムハウス』 【新連載】 由野 寿和 静岡県一家三人殺害事件発生。その家はまるで息をするかのように、いや怒っているかのように、大きく立ちはだかり悠然としていた 午前十一時。サイレンを鳴らさず、車両は静岡県藤市十燈荘(じゅっとうそう)に到着した。静岡中央市にある県警本部から十燈荘までは、藤湖をぐるっと大回りして藤市経由でトンネルを通り、小山を登ることになる。藤湖を見下ろす高級住宅街、十燈荘は、土曜の昼だが活気はない。既に外部への交通規制が敷かれているとはいえ、不気味に静まり返っている。ここで殺人事件があったことを、住民達が知っている気配はなかった。その家…
小説 『司法崩壊! ~刑務所が足りない!起訴できない!~』 【第23回】 利根川 尊徳 出所後、人手不足に陥っている農業・漁業・林業の一次産業に就労させるというのは妙案か!? 須崎が生まれて初めて「月下氷人」に挑んだ時と相前後して、同じ様に三か月で取り組んだ調査を二か月そこそこでほぼ終えた桜田は、あの約束を果たす為、如月陽子を恵比寿にある高級レストランへ呼び出していた。如月は約束の時間一五分前に桜田がリザーブしておいた席に着いて桜田を待っていた。そこへ呼び出した桜田本人は五分前にやって来た。「ごめん陽子。待たせた?」と桜田に言われ「気にしないで。自衛隊では遅刻厳禁で一…