小説 『火点し時』 【第8回】 順菜 隣の部屋の男から誘われた。つい昨夜、別の女性と愛し合う“あの声”が聞こえたのに、今度は私? 不審には思ったが… 【前回記事を読む】隣の部屋から声がした。男女の、抑揚ある溜め息まじりの…すぐに“あの声”だと分かった。つい聴き入っていると…「食欲ありますね?」紫の前の皿はこんもりとしている。しかし去っていった彼女の皿はちんまりしたもので、後ろ姿も確かに細かった。ちょっと恥ずかしかったが、「人生の楽しみですから……」「もちろんそうですよ。たくさん食べる人、いいですよね」紫の中で危険信号がちらついた。たった今、彼…
小説 『「訳アリな私でも、愛してくれますか」最終回記念!総集編ピックアップ』 【新連載】 十束 千鶴 その時ドレスが引っかかり、左胸に詰めていたパッドがはらはらと落ちた。皆こちらを見ていた。先輩もいた。急いで拾ったが… 【前回の記事を読む】"結婚しない選択"と親からのプレッシャー、「赤ちゃんの服を見て『あら可愛い。いつか孫ができたら買ってあげたいわ』って」「今日はお客さん、結構来てくれたみたいだね」「はい。お祝いの言葉もたくさんいただきました」社長は上機嫌で、くるみに話しかけてくる。しかしくるみはそろそろ慣れないピンヒールのおしゃれパンプスで靴ずれが痛み出して余裕はない。「うちには女の子がたくさんいてよかったよ…