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エッセイ
『朝陽を待ちわびて』
【第7回】
桜木 光一

「いてくれれば、それだけでいい。いつか一緒にお家に帰ろう」叶わないかも……心の中のつぶやきに涙が流れた

昨夜から痛みとしびれの抑制の薬を強めに処方して頂き、夜中は3時間の睡眠を確保させてあげた。痛みの根源が脊髄か骨盤なのか、判断はまだできないと医師から説明を受けた。痛みの沈静化ができれば、布団の上で座る訓練をさせることができるかもしれない。一縷の望みは簡単には叶わなかった。昨夜20時30分、妻は頭部激痛と高熱に襲われ白目をむいた。声も男性のように太くなり、ベッドに爪を立てひっかいた。まるでオカルト…

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くんぷう

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クーラーもない車、でも車中で寝るのは心地よかった。そしてフェリーに乗って島に着いたときのあの感覚。人生には誰しも忘れられない一瞬がある。例えばその時に感じた香りや空気の色など、かたちは人それぞれかもしれない。それは時を超えて持ち続ける記憶であり、それを思い出した瞬間 、まるでその世界に戻ったかのような気持ちになる。海に向かう小道を横切る小さな蟹、そして日陰 の裏道を歩くときのジメッとした匂い、そ…

ランキング

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    【新連載】
    波方 遥
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    【新連載】
    春山 大樹
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    赤信号無視の乗用車が、トラックに衝突し大破した。シートベルトをしていなかった重症の若者が搬送された、その病院の医師は…

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    『老楽』
    【第2回】
    遠藤 トク子
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    「汚れている! うんちしたくなったら教えてね」お風呂場に連れていかれオムツを外してお湯のシャワーを浴びせられ…

    黒いマントの布を頭からかぶった写真屋さんは同じことを何度も注意する。居間から中の間、奥の間の板戸をすべて取り外し、床の間を背に家族全員、一張羅を着て三列に並んで緊張して待っていた。あんちゃんの成人式…

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    諜報エージェント達は非デジタルの道具へと原点回帰。「タイプライター」やスパイ技術の「手渡し」が復活!

    21世紀のグローバリゼーションの脅威に対しアメリカが長年使ってきた手段によりどう対処していくか、CIAの内部の展望を探ってみよう。CIA本部はしっかりした建屋で、入場は厳しく制限されている。それでも…
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    友人の4歳上のお兄さんの友達との結婚。親の期待から逃げるようにした結婚が、苦労の始まりだった

    その店は中華屋じゃなく今のラーメン専門店的なお店で、ラーメンのスープがあっさりしていて麺も細麺で、食べたときに子供ながらに、「こっちのラーメンが好き!」と衝動的に思ったことをはっきりと覚えている。あ…
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