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小説
『約束のアンブレラ』
【新連載】
由野 寿和

ずぶ濡れのまま仁王立ちしている少女――「しずく」…今にも消えそうな声でそう少女は言った

二〇〇三年の年末。猛烈な雨が、差しているビニール傘を氷のように叩きつけている。静岡県藤市にある藤山を局地的な大雨が襲っていた。静岡県警の鳥谷(とりたに)は手に持っていた新聞を口でくわえると、慌ててしゃがみ込んだ。泥でぬかるんだ足元に、大量の水が靴を侵食する感覚が襲った。「こんな雨の中、こんなところにいたら風邪をひいてしまう。ここは危険な場所だ。お嬢さん、名前は?」少女はずぶ濡れのままその場に仁王…

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小説
『約束のアンブレラ』
【第9回】
由野 寿和

キャンパスから駿河湾が一望できる被害者女性の出身大学の教授に聞き込み捜査へ

エンジンをかけて白い煙を出すと、三好和希は紫藤美術大学に向かって車を走らせた。静岡中央駅から車で二十分ほどの場所にある。緑豊かな山間部に位置する坂の上にあり、キャンパスからは駿河湾が一望できる絶好のロケーションである。紫藤美術大学は、静岡県内で唯一の美術大学であり、その質の高い教育と独創性に富むカリキュラムで、東日本でも有名な美術教育機関だ。絵画、彫刻、デザイン、映像、ファッションなど、広範囲に…

ランキング

  1. 小説
    『愛は楔に打たれ[人気連載ピックアップ]』
    【第10回】
    青石 蓮南
    1位 1

    家族の中で自分だけB型なんていう事が、本当にありえるのだろうか…。医者の言葉がメリーゴーランドのようにぐるぐると回り続け…

    自分だけB型なんていう事が、本当にありえるのだろうか。蓮の頭の中は、医者の言った言葉がメリーゴーランドのようにぐるぐると回り続けた。その夜、蓮は寝床に入ってもなかなか寝付けずにいた。枕元に置いてある…
  2. エッセイ
    『僕の大学デビュー天下取り物語』
    【第9回】
    松本 竹馬
    2位 2

    喧嘩を売った相手は、本物のヤンキーだった。それでも、メンツを保つために逃げ出すことなんてできない。そう思い前を見た瞬間...

    時間が迫り、僕らは決戦の場所である駐車場に向かった。各々の武器をワゴンRに詰め込み、AK-69を爆音で流しながら、無理矢理、荒い運転をして。駐車場に着くと、まだ工学部の連中は来ていなかった。「あいつ…
  3. 小説
    『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』
    【第2回】
    行久 彬
    3位 3

    父は一月のある寒い朝、酒を大量に飲んで漁具の鉛を腹に巻きつけ冷たい海に飛び込み自殺した…

    智子は実直で潔癖なところがあり、今までも孝雄の参加した漁協主催の親睦旅行先での下卑た出来事を漁師仲間たちが面白そうに話すのを聞く度に嫌な思いをしていた。そんな話に慣れることはなく、むしろ話を聞く度に…
  4. エッセイ
    『運命に寄り添う、そして生きる[人気連載ピックアップ]』
    【第5回】
    輪月 舟
    4位 4

    息子が発達障害と診断された。夫は「どこが障害なんだ!」「母親が甘やかすからこうなるんだ!」と、息子を抑えつけ怒りまくった

    ・保育園はファンタジーの国!先生が読んでくれた本に登場した『ピーターパン』(原作ジェームズ・マシュー・バリー、1904年に童話劇として初演された)、「もしかして、これ、ピーターパンの影? 本を読んだ…
  5. 小説
    『愛は楔に打たれ[人気連載ピックアップ]』
    【第13回】
    青石 蓮南
    5位 5

    「俺の血液型、B型だってさ」と息子に言われ…。誰にも言わずに隠し通していたことが知られてしまった。彼の父親は、元夫ではなく…

    蓮は、すぐに答えを出す事ができなかった。「少し考えてみるよ」蓮はそう答えた。後日、蓮は永吉に呼ばれて、永吉の家に行く事になった。そこであおいから直接その話を聞かされた。その日の夕食は、特製親子丼であ…

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  1. エッセイ
    『運命に寄り添う、そして生きる[人気連載ピックアップ]』
    【第14回】
    輪月 舟
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    「愛し合っているならセックスできるよね」と経験者の彼。デートのたびに勝負パンツを履いてみたが…

    いじめのターゲットが私以外の誰かに変わっていた。子どもは飽きっぽい。標的はどの子になったかすぐにわかった。彼女は他校不良女子から目を付けられる不良の代表。不思議なことに彼女とはなんだかウマがあい、余…
  2. エッセイ
    『フケメンの戯言』
    【最終回】
    現王園 秀志
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    言葉は是もあり非もある「もろ刃の剣」…人間の本質、言葉の役割、宇宙的な視点を通して人生を考察する

    結局は人間として明確なことは、人として生まれたことで、その姿かたちが紛れもなく本人であり、中身については誰も分からないのではないかと勝手な解釈をしている。根拠もないことを薄っぺらな分析で怒られるかも…
  3. 小説
    『約束のアンブレラ』
    【第9回】
    由野 寿和
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    キャンパスから駿河湾が一望できる被害者女性の出身大学の教授に聞き込み捜査へ

    エンジンをかけて白い煙を出すと、三好和希は紫藤美術大学に向かって車を走らせた。静岡中央駅から車で二十分ほどの場所にある。緑豊かな山間部に位置する坂の上にあり、キャンパスからは駿河湾が一望できる絶好の…
  4. 評論
    『外科医が歩いてきた道』
    【新連載】
    笠原 浩
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    なぜ体の外側の診療が「内科」で内部の手術が「外科」? 実は百数十年前までは、外科医の仕事は体の表面、外側だけに限られていた!

    ―身体内部の手術をするのに「外科」?―手塚治虫の「ブラック・ジャック」は1970年代に少年週刊誌に連載された医療漫画ですが、現代でも50周年記念の腕時計がセイコーから発売されるなど高い人気を保ってい…
  5. 小説
    『赤い大河』
    【第12回】
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    ゲームが進みチップが積み上がる頃、違和感を感じた。ふとあたりを見回すとその正体はすぐに分かった。「お前、何かやってるだろう」と男は言いだし―。

    十分ほどで席を立った純也は、興奮した三角の目をして戻って来た。白い歯が覗いているので、首尾よく懐を温めてきたようだ。「──マジ痺れた。通い詰める奴の気持ちがわかるな」「おい、就職前だぞ」「俺はまだ就…

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