眠れる森の復讐鬼
けたたましいサイレンの音が鳴り響いている。そしてその音は嫌な気持ちになる程どんどん大きくなってきて、すぐそこまでやってきたと思ったら突然聞こえなくなった。
ERの自動ドアが開いて救急車から下ろしたストレッチャーを白いヘルメットと青いコートを身に着けた二人の救急隊員が中に運び入れた。ストレッチャーの上で、頸椎カラーを装着され、オレンジ色のクッションで頭部をバックボードに固定された若い男が苦しそうに冷汗を流している。
「バイタルは血圧90の51、脈拍48、酸素飽和度は・・・・・・」
「これで三台目だぞ! 他の病院は何してるんだ!」
女性隊員の報告を遮って、濃い緑色のスクラブとパンツ姿で銀縁眼鏡をかけた若い医師が吠えた。色白で細面、頭は七三分けで済ましている。