バタンガス[1]の港には昼前に着いたが、プエルトガレラ[2]へ渡る船は今しがた出たばかりのようだ。客はみな、船着き場の薄暗い待合室で、次の便まで二時間近く待たなければならなかった。待合室の中は、東南アジアの町に特有の、あの焦げた油に酢を混ぜたような匂いが充満していた。蒸し暑くて淀んだ空気の中で、飲み物や菓子、パン、原色の果物類、匂いの強い串焼きの肉などを売る店が、ところ狭しと軒を連ねていた。通り…
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小説『ディワータの島』【新連載】しのぶひろ
フィリピンに訪れていた二人の日本人。蒸し暑さ、独特な匂い、慣れない異郷の地で彼らは"ある島"に向かっていた
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第9回】響乃 みやこ
彼女が遺した手紙は、まるで報告書だった。感情も何も含まれていない図鑑のような文。でも最後、たった一行だけメッセージが…
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第8回】響乃 みやこ
あれから数か月。動かなくなった彼女の体には苔が生え始めた。もう分かっていた。彼女は「壊れた」んだ。食料も底をついてきて…
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第7回】響乃 みやこ
「生きて」―彼女はクシャっと顔を緩めて満面の笑みでそう言った。直後、接近してきたロボットがドォン!! と…
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第6回】響乃 みやこ
「なにかあるの?」「大丈夫、なんでもないよ」――本当に? どうしようもない胸騒ぎが、胸の中をどんどんと埋めていく
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小説『アミとアライの詩 銀河系宇宙編』【新連載】太田 祐一
その少女は女神の涙から生まれた存在だった?! 女神は自身の分身たる少女に月の光を輪にしたような指輪を授けた
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第5回】響乃 みやこ
――少しの罪悪感が湧く。ロボットである私が育ての親だということ、いつかは壊れて、そばにいてあげられなくなること。
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第4回】響乃 みやこ
「よく見ていて…ライフルはこうやって使う」――野生のシカに照準を合わせ、引き金を引くと、鋭い銃声が空気を切り裂いた。
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第3回】響乃 みやこ
この子を拾ってから1年が過ぎた。喋れるようになり、カエルに「けろけろ」、花を「おはな!」…そして私に「だれ?」
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小説『二十世紀のおとぎ話』【新連載】オー・クンケー
先の大戦で命を落とした小さな王国の皇太子と皇太子妃――しかし、彼らには5人の子供がいた
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【第2回】響乃 みやこ
飛び起きて見回したが、拾った赤子の姿がない。探すと、ベランダで歩く練習をしていて――ここは5階。落ちたらまず確実に…
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小説『新事記』【第2回】吉開 輝隆
午前4時24分、大音声を残して消えた老人。その夜、その老人が家を訪ねてきたので挨拶をして下げた頭を上げると…
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小説『天界の者達』【新連載】安田 員壽
「運と良いシーンを逃さない事かな」――プロカメラマンの祖父と大学生の孫。二人は写真を撮りに朝の静かな神宮に来ていた
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小説『テラスの旅路Ⅰ』【新連載】響乃 みやこ
【プロローグ】そして、「■■」は消えた―― 荒廃した世界で赤子を見つけたロボット。その時確かに、感情が胸に宿った
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小説『Angel Story もう一つの創世記』【新連載】八百原 起也
どこまでも続く甘美な世界。柔らかく流れる風、心地よいせせらぎの音…この栄華は永遠に終わることがないと思っていた
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小説『夜幻水鏡抄』【新連載】堀内 ナオミ
水鏡…?――艶やかな水晶の縁取りに両の手のひらをそっと乗せ体重をかけ、おそるおそる水面を覗き込んだ
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小説『ガッキーとグッキー 不思議な木箱』【第5回】芝 くりむ
海面に浮かぶ木片を発見し、それに引き寄せられる見習い宮大工。バラバラになった木片を集め木箱にしようとするが…
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小説『顕治とチピタ』【第3回】菊池 亮
飛行機で隣だった若い女性に「遊びの名刺」を渡した。私みたいな高齢者にも親しみを感じてくれたことが嬉しかった。
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小説『紅の脈絡』【第8回】水無月 慧子
月夜の道を歩く竜興兄妹と虎太郎夫婦。変わらぬやわらかな笑顔――「発破だ!」 虎太郎が叫んだ。爆発音は二回、三回と続いた
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小説『人生の切り売り』【第12回】亀山 真一
読書にふけっていた私はページをめくる手を止めた。記憶が曖昧な私に「そろそろ僕に泣きつくかい?」と悪魔が微笑み...