【前回の記事を読む】その少女は女神の涙から生まれた存在だった?! 女神は自身の分身たる少女に月の光を輪にしたような指輪を授けた
エピソード1 愛と平和の使者
前文
満月の翌朝
「ウーマ、早く起きなさい」「神殿での清掃奉仕だったろう? 今日は……」
と母親の声がする。
「はーい、今、行きます」
ウーマは、急いで起きると、窓辺に来ている二羽の小鳥に餌をやり、階段を下りて食卓へ向かう。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう、ウーマ」と、母親。
「おはようございます、お父様」
「おはよう、ウーマ」
「昨夜は遅かったようだが、何かあったのかね?」と、父親の声。
「えぇ、昨夜はとても不思議な出来事があったの」
「なんだい、それは……?」
「お父様、これを見て!」と、ウーマ。
ウーマが右手を差し出すと……
「うん、手がどうかしたのかい?」と、父親。
「ちゃんと、手を洗ってからご飯だよ」と、母親。
「えっ、見えないの?」と、ウーマ。
「何が……」と、父親と母親は互いに顔を見合わせながら、不思議そうな顔をしている。
『あっ、見えないの、私には美しく輝く指輪が見えるのに、お父さんとお母さんは見えないんだ……』
そう、心の中で呟くと、ニコッと笑顔に切り替えて、
「お父様、お母様、行ってきまーす!」と言って、さっさと、家を出て、小走りに駆けていく。
「ウーマ、朝ご飯はいいの?」
「お母様、大丈夫よ!」
「じゃあ、お弁当は持っていきなさい!」
「あっ、そうだ」
急いで、家に入ると、テーブルに置いてあるお弁当を持っていくウーマ。
「夕方には、帰っておいでよ」と母の声。
「はーい!」と、ウーマ。