神殿での清掃奉仕
十二~十四歳くらいの子どもたちが、神殿で清掃を行っている。モップをかける者がいたり、机を拭く者がいる。
そうした中に交じって、ウーマは、机を一生懸命拭いている。神殿の祭壇のある広間の片隅に一人たたずむ男の子がいた。名前は、シモン。シモンは、じっと、ウーマを見ている。清掃奉仕が終わりがけに、シモンは、ウーマに近づいて、こう言った。
「君がしている指輪は、とてもきれいだね。まるで、月の光のようだ」
ウーマは、顔をあげて、シモンを見つめる。
「あなたには、私の指輪がわかるの?」
「みんなはわからなくても、僕はわかるよ。僕は太陽の王冠をいただいているから……」
シモンの頭の上を見ると、
『確かに王族の王冠のようなものをしている。でも、誰も他の人は気づいていないみたいだ』そう思うと、別にびっくりしたような素振りを見せずに、シモンに話しかけた。
「私たちだけみたいね、きっと。他の人たちは、自分のことで忙しいのよ……」
「僕たち、何か、違うところがあるみたいだね」と、シモン。
二人、顔を見合わせて、ニコッとする。
清掃奉仕の後、神殿で神官様が、地球がどうしてできたのか、人間がどうして存在するようになったのか、話をしている。話を聞いてから、友達たちとおしゃべりしたりした後、夕方になっていたので帰ろうとすると、門のところにシモンが待っていた。
シモンとは、そんなに仲良しというわけではなく、同じクラスの男の子というくらいしか、認識がなかった(ウーマは、たくさんの友達がいて、誰とでも仲良くなれる女の子だった)。
シモンは、ウーマに話しかけた。
「次の満月の夜に、ビッグストーンのところで会わないか? 祈祷師のサン先生がしきりに言うんだ」
「私は、あそこで指輪を受けているわ。何か、意味があるのかもしれないわね。わかったわ。私も一緒に行くわよ」とウーマ。
ウーマは、次の満月まで一カ月近くあったので、自分からおじいさんやおばあさんに話を聞いたり、月の神様のこと、太陽の神様のこと、龍神様のことなど一生懸命調べたりした。いろいろとわかることがあったが、結局は、その日になってみないとわからない、ということに気づいた。