【前回の記事を読む】先の大戦で命を落とした小さな王国の皇太子と皇太子妃――しかし、彼らには5人の子供がいた

一.ユートピリッツ王国

先の大きな戦争が終わって、一年が過ぎたある春の日、エドワード国王は、三人の王子と二人の王女を王宮の中心にある宮殿(きゅうでん)の大広間(おおひろま)に集めました。

五人は、宮殿の広いパティオ(中庭(なかにわ) )に沿(そ)って造(つく)られた、大理石(だいりせき)の太い柱が続く長い回廊(かいろう)を歩いて、宮殿の大広間に向かいました。

五人が大広間に入ると、正面にユートピリッツ王国の紋章(もんしょう)である翼(つばさ)の生(は)えた馬「ペガサス」が描かれた大きな机が目に入ります。

その奥には、赤い宝石が飾られた王冠をかぶり、金色のメダルを首からかけた白い髪のエドワード国王が、どっしりと玉座(ぎょくざ)に座り王子と王女たちを待っていました。

ユートピリッツ王国の法律では、男女とも十八歳で成人と認められます。

五人も、今年七月の誕生日には、成人を迎えるまでに成長していました。みな、今では王宮を離れて寄宿舎(きしゅくしゃ)で生活をし、学校に通っています。

王さまは五人の顔を見ると、久しぶりに会った嬉しさに優しい笑みを浮かべてこう話し始めました。

「第一王子フィリップ、第二王子エリック、第一王女アンジェラ、第二王女カトリーヌ、そして、第三王子エリオット。お前たちは、両親の死を乗り越えて立派に成長した。

もうこの夏には、成人として認められる歳になるのだな。アルバートやクリスティーナが、今のお前たちの姿を見たら、どれほど喜んだことだろうか」

五人の父親である皇太子アルバートは、軍隊の司令官 (しれいかん)として先の戦争の最前線で勇敢 (ゆうかん)に戦い命を落としました。