母親であるクリスティーナは、国民の女性たちと一緒に病院でケガをした兵士たちの看護をしていました。

しかし、その病院が敵の爆撃機(ばくげきき)による空襲 (くうしゅう) にあい、皇太子妃も悲しい最期をとげたのでした。

ですから、三人の王子と二人の王女も、王さまと同じようにずっと悲しみに沈んでいました。

王さまは、こう続けました。

「此度(こたび)の戦争では、わが国も連合国と一緒に戦い独裁国に勝ったとは言え、受けた損害も甚大であった。私は、国民の命も、国民の幸せな生活も、アルバートも、クリスティーナも、大切なものをたくさん失ってしまった。

大切なものを、この戦争から守ることができなかった。そこで私はつくづくと、これからのわがユートピリッツ王国は〝強く〟ならなくてはいけないと考えた」

王さまは、ここまで話すと五人の顔を一人ずつ見つめ、こう続けました。

「そこでお前たち五人には、これから一年の間に世界中を旅して、それぞれが〝世界一強い〟と思うものを探し出してきてほしい」

世界中旅して、しかも一年という短い間に世界一強いものを探してくるようにというあまりの難題(なんだい)に、五人はたいへん驚き、お互いに顔を見合わせるのでした。