【前回記事を読む】『ごめんね、幸せにしてあげられなくて…産んでごめんね』『産まなければよかった』…あの女の言葉がフラッシュバックする。

第二章 旅立ちと仲間

臆病者

「ゔ、ぅ……」

(なにこれ……手足が、殴られたみたいに……)急に起こったことを脳が処理しきれず、体を動かそうと必死に頭をフル回転させても、行動に至るまでの思考回路が遮断されていて、なにも考えられない。視界が黒くかすんでいて、今自分がどういう状況に置かれているのかさえわからない。

「ティーナ!! 逃げろ!!」

いきなり飛び込んできたログの声でようやく「考える」ことを再開することができた。自分の身になにが起ころうとしているのか……逃げなければいけないというのはログの精一杯の叫びでわかった。

痛みをこらえて体を起こし、逃げようとした。でも、体は言うことを聞かなかった。動こうとしても、鉛がついている様に、足だけが全く動かせなくて、怖くなりながら自分の足を見た。

「血……」

自分の足には切り傷のようなものがついていて、血がドバドバと流れていた。そして、それと同時に自分がなにから逃げなければいけないのか理解した。

ティーナのすぐそばにあった木が雷で燃えて、倒れかかっていた。

木の根はゆっくりと燃えていき、ぐらぐらとカウントダウンをするように木は揺れている。早く逃げないと、本当に死んでしまう。手を伸ばし、ログに助けを求める。

「ログ……!」

早く動け、早く動けよ!!

そう言い聞かせたって、足は動かない。とうとう木はティーナのほうへ落ちてきて、火で燃える木の熱気がどんどんと近づいてきた。

「だ、誰か……」

「うおおお!!!! 」

いきなり誰かが木とティーナの間に割って入って、斧で落ちてくる木を止めた。火のせいで逆光になっていて、ティーナからはシルエットしか見えなかったが、ログはティーナを助けたのが誰かわかった。