プロローグ
ずっと昔の夢を見た。
今自分は、宇宙から光を抜き取ったような、真っ暗な空間にいる。真っ暗な空間には底が無くて、所々に、エラー画面が表示されているブラウン管テレビが宙に浮いている。
ブラウン管テレビを積み上げて作った、上へ上へと、どこまでも続いているタワーは、光っているテレビの画面で夜の都会の様にキラキラと綺麗に見える。宙に浮いているテレビの上を走って行って、つたっていく。
自分よりずっと遠く、それでもまだ目で見える、届く所。そこには自分の体よりずっと、ずっとずっと大きなテレビが浮いている。
そこを目指して、ひたすら走っている。目的はもう忘れた。
でも、絶対にあそこに行かなければいけない、という使命感にも近い感情があった。テレビを跳んで、テレビから落っこちて、たくさん怪我をした。足は腫れてとても痛い。
それでも、足は止まらない。止まれない。テレビをつたっていって、大きなテレビに飛び乗った。
そのテレビは、触ると映像を映し出した。中には白衣を着た、科学者らしき人たちが自分を見ている。
「出して! 出して!」
テレビの画面を叩きながら、画面の向こう側の人たちに訴える。でも、向こう側の人たちは「■■」を見ようともせずに、持っているリモコンの電源ボタンを押した。
その瞬間、世界は壊れ始めた。
たくさんあったテレビのタワーは崩れ落ちて、宙に浮いていたテレビは闇の中へと落っこちていった。そして、向こう側が見えるテレビも暗く黒く消えていって、画面の向こうの人達は「■■」を見た。
最終確認でもしているように、まっすぐな眼差しで。でもその眼差しの中には、どす黒い、理解しきれないほどの暗い感情がこもっていた。
どんどん「■■」も消えていって、足からどんどん暗くなっていった。自分の体が消えていっているという恐怖より、なにもできない自分の無力さを思い知らされ、悔しかった。もう半分以上が消えているテレビの画面をバシバシと叩き、「出せ」と訴える。
「ゔあああああああっ!!」
そして、「■■」は消えた。