【前回の記事を読む】分厚い封筒を膝に置かれて、「今までの給料と、それから餞別だ。急で済まないが頼む、わしの気持ちも分かってくれ」と…やがて駅の戸がガラガラと開けられた。骸骨は行商の小母さんたちと一緒に中へ入った。辺りには魚の匂いが充満した。小母さんたちはガヤガヤと賑やかで逞しかった。その姿を見ていると、生きる力が湧いてくるような気がした。和美や洋子に会えなかったのは残念だが、前を向いて生きていこ…
[連載]標本室の男
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小説『標本室の男』【最終回】均埜 権兵衛
「眩しい。目の奥が痛い」やはりそうなのだ。盲目だった妹は、いま間違いなく見えている。本当はこのまま病院へ連れて行きたいが…
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小説『標本室の男』【第49回】均埜 権兵衛
分厚い封筒を膝に置かれて、「今までの給料と、それから餞別だ。急で済まないが頼む、わしの気持ちも分かってくれ」と…
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小説『標本室の男』【第48回】均埜 権兵衛
「お前、ちょっと匂うぞ、この前いつ入ったんだ?」そう言って浴室に向かわせ、そっと覗きこんだ。そこに見えたのは…
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小説『標本室の男』【第47回】均埜 権兵衛
どこへ行っても、誰と出会っても、驚かせ、怖がらせ、嫌悪させてしまう。異形のものは人の中へ入るのは赦されないのだろうか。
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小説『標本室の男』【第46回】均埜 権兵衛
「満足?正体を隠してかい? …いつまでそれが続くと思っているんだ。何なら僕からこの家の人に話そうか?」そのことばに硬直した。
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小説『標本室の男』【第45回】均埜 権兵衛
彼女への淡い憧憬…これは決して口にしてはいけない。というよりも、本当の人間ではない自分には越えてはいけない一線だ。
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小説『標本室の男』【第44回】均埜 権兵衛
この世は何と色鮮やかなのだろう。これを和美に伝えたいと思ったが、その方法が判らない。それがもどかしかった。それでも…
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小説『標本室の男』【第43回】均埜 権兵衛
机に向かって無闇に煙草を吹かした。何だかもう永久に骸骨には会えないような気がした。
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小説『標本室の男』【第42回】均埜 権兵衛
突然現れたあの男の、妙に生々しいマスクと手袋が気になっていた。「おい、そのガイ骨ってぇのは何のことだ、あいつのことか?」
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小説『標本室の男』【第41回】均埜 権兵衛
「あ、駄目だ、見ない方がいい」タイヤの間に、友達の頭部。身体は不自然に平らで、その先はもの凄い血溜まり...既に死人の顔色だった。
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小説『標本室の男』【第40回】均埜 権兵衛
いずれそれをもの哀しく思い出さなければならないのだとしたら、何のために出会いがあるというのだろう。
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小説『標本室の男』【第39回】均埜 権兵衛
目の不自由な妹をカメラに収めていた男――一体何者なのか…ハンドルに齧りつくようにして男の後を尾行した
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小説『標本室の男』【第38回】均埜 権兵衛
少女を抱きかかえたまま、ふらふらと藪の中へ泳ぎ出す骸骨。少女にきゅっと抱き着かれると、尻餅をついてしまい…
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小説『標本室の男』【第37回】均埜 権兵衛
骸骨は少女を信じたかった。すっかりいじけてしまった心で。人を信じるということは、疑うよりもずっと難しいことなのだということを知らないまま。
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小説『標本室の男』【第36回】均埜 権兵衛
初めて触れた人の手だった。あの時、白い杖を渡す時触れた温かくてやさしい手、その小振りな感触は確かなものだった。
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小説『標本室の男』【第35回】均埜 権兵衛
行方を晦ました骸骨。代わりに別の骸骨を置くと患者たちが勝手にクリーニングに出していたと決めつけてしまい…
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小説『標本室の男』【第34回】均埜 権兵衛
「どなた? この辺の人じゃ…」骸骨に全く動じない少女。視線が合わず、白い杖を持っていて…
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小説『標本室の男』【第33回】均埜 権兵衛
もし死体ということになれば火葬にされかねない。生きたまま焼かれる…骸骨の空想は止まらない。
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小説『標本室の男』【第32回】均埜 権兵衛
岬の突端に古びた小さな神社がある新潟県の海浜に来た骸骨。毎日ぼんやりと海を眺めながら…
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小説『標本室の男』【第31回】均埜 権兵衛
白々と哀れむような、何かを咎めるような乗客の目差し。どうしたのだろう、急にどうしたというのだろう。