彼は暫し愁い顔になった。だがつっと立ち上がると、「じゃ皆さん、あとをお願いしますね」と言って出ていった。残った者は怪訝な顔で彼の後姿を見送った。「どうしたのかしら、院長先生変だったわ」主任が首を傾げた。「そうねえ、何か言いたそうだった」「何だったのかしらねえ」若い二人はお茶を啜りながら相槌を打つ。伊藤医師は無言でひと所を見つめていた。目が妖しく光って、どうやら余り性質のよくないことを考えていたら…
[連載]標本室の男
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小説『標本室の男』【第10回】均埜 権兵衛
知らず識らずのうちに骸骨のことを秘密にしていく方向を辿っていく院長
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小説『標本室の男』【第9回】均埜 権兵衛
目の前で秘密を知らない看護師二人に罵られる骸骨。当然動きだして驚かすことはできずに…
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小説『標本室の男』【第8回】均埜 権兵衛
長身でにやけた三流役者といった風貌の三十一歳の医師は看護師の質問をはぐらかし…
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小説『標本室の男』【第7回】均埜 権兵衛
長年あの小学校で標本として暮らしてきたがもう嫌になった。元々出番などないし…
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小説『標本室の男』【第6回】均埜 権兵衛
骸骨にもグローバル化の波!?標本室にまで名声轟く医師に無茶なお頼いをしてきて…
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小説『標本室の男』【第5回】均埜 権兵衛
突然挨拶してきたのはしゃべる骸骨!? イタズラかそれとも…。
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小説『標本室の男』【第4回】均埜 権兵衛
珍しくウイスキーを飲んだ夜。うたた寝し目を覚ますと、診察室のドアが開いていて…。
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小説『標本室の男』【第3回】均埜 権兵衛
理科標本室の前で、ふと人の話し声が聞こえたような…。警備員はさっと身構え…
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小説『標本室の男』【第2回】均埜 権兵衛
幽霊が出るという噂があった校舎を歩いていると、ヒソヒソと話し声がしてきて…。
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小説『標本室の男』【新連載】均埜 権兵衛
【コンテスト大賞作】恩師に誘われて20年振りに訪れた校舎。しかし、男は少しの親しみも持てなかった…。