【前回の記事を読む】どこへ行っても、誰と出会っても、驚かせ、怖がらせ、嫌悪させてしまう。異形のものは人の中へ入るのは赦されないのだろうか。
其の参
[五]
その夜客は連泊している伊藤医師だけだった。源造は彼に出す料理を作っていて、骸骨はそれを見学していた。源造は珍しく腕が冴えず、それを気にしてか、時折り骸骨の方をちらと見たりしていた。
一方和美は居間に出てきたのはいいのだが、ぷいと横を向いたまま、誰とも口を利かずに楽器を玩んでいた。
本当は言い過ぎたかなと思っていた。伊藤医師から耳打ちされるまでもなかったのだ。あの時から、松林で藪漕ぎをして二人で転んだ時から気づいていた。指先の感触がそれとなく物語っていた。何故ガイ骨と名乗ったのかも。それなのに素知らぬ振りをしていた。何も気づかなかった振りをしていた。でも思いもかけぬことを言われてついカッとなってしまったのだ。
本当は骸骨の言うとおりだと思っていた。ウソつきは、そして卑怯者は和美自身だったのだ。ただあの時はまだそれを認めたくなかった。
「まぁ、意地っ張りねえ、誰に似たんだか」
京子はそんなことを言って、源造の方を見てくすくす笑った。だがそれに応えず、源造は骸骨の様子をそれとなく窺っていた。
「ねえあなた、和美が‥‥」
だが二人とも返事をしないでそれぞれの思いに耽っている。
「ねえ、あなたったら‥‥」
「うん?」
「うんじゃないですよ、一体どうかしたんですか?」
京子はちょっと心配そうな顔で訊く。