父は天井に目をやり、少しの間考え込んでから、「お母さんは、もう少ししたら天国に行くんだ」と、言った。「天国? いつ帰ってくるの?」僕が首をかしげると、父が顔を振る。「いつ帰ってこられるか分からないけど、暫くは雲の上から光とお父さんを見守ってくれるんだ」そう言って、父は僕を抱き上げ立たせると膝をつき、棺の中の母に顔を寄せた。「沙代子、帰ってこいよ」父は、母に口づけをした。僕も、母の頬に唇を当てる。…
[連載]虹色の魂
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小説『虹色の魂』【第6回】青居 蒼空
「お母さんは、もう少ししたら天国に行くんだ」父の言葉に戸惑いながら、冷たい母の手に触れていると突然感電したような衝撃が走り…
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小説『虹色の魂』【第5回】青居 蒼空
5歳の誕生日を迎えてすぐ母が死んだ。棺の前で背中を丸めて泣いている父の後ろ姿が見えた。こんな父の姿を見るのは初めてだった…
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小説『虹色の魂』【第4回】青居 蒼空
翌朝再び祖母と共に病院へ...「振り向いた父は目の下に隈ができ、一晩でげっそりと痩せこけて見えた。」
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小説『虹色の魂』【第3回】青居 蒼空
「僕、イチゴがのってるケーキじゃなきゃ嫌だ!」地団太を踏んだクリスマスの日。母は駅前のケーキ屋に行き、そして…
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小説『虹色の魂』【第2回】青居 蒼空
仲の良い母と父は僕が生まれてからもっとラブラブに。母が僕を抱きしめると「俺も俺も」と焼きもちを焼く父
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小説『虹色の魂』【新連載】青居 蒼空
「光は俺に似て二枚目だなあ」「うん、お父さんも僕に似てかっこいいよ」