【前回の記事を読む】先ほどまで一緒に笑いあっていた仲間が、無数に重なり合う死体の中で人形のように置かれていた。――前世の僕が見た戦争の記憶

第二回 再会

二〇一三年

母の仏前に手を合わせながら、今日見た夢を思い返す。母の魂を見送ったあの日から、僕は前世の夢を見るようになった。

大東亜戦争と呼ばれていた時代だ。

小学校に上がり、それが太平洋戦争のことであると知った。五歳の時から見続けてきたが、今だに戦場の夢には慣れない。特に今回は、いつもとは違うさらに凄惨な情景に、心臓が震えるようだった。

母との別れから十二年の歳月が流れた。

何度も繰り返し見た戦場の夢に出てくる、太郎との絆も深くなっている。現世では会うことが叶わないかもしれない唯一の友。僕は母の写真を見ながら、大きく息を吐いた。父は、僕の見る夢は前世で体験したことだと言った。

「自分の前世だけではなく、人の頭の上に見える光に手を翳すことで、その人の前世も視ることができる。だが、現世で起こる出来事は何も分からない。未来を予知する能力があれば、沙代子を救うことができたはずだ」

父は涙で潤んだ目をきつく閉じ、肩を震わせた。そんな父の姿を見て僕は、母を救うことができなかった、前世が視える力に一体、何の意味があるのだろうと思った。

誰にも言えない能力を持つことで、僕は自然に人との距離を置くようになった。 その思いを覆す出来事が起こったのは、修学旅行で奈良に行った時だ。

誤ってクラスメートの頭上に触れてしまった。彼の前世の姿は、落ち武者だった。落ち武者の彼が鹿を殺し、むしゃむしゃと一心不乱に食べている光景が浮かんで視えた。

その一時間後、友人は公園で鹿に追いかけられた。人が大勢いる中で、その鹿は突然、彼に突進してきた。彼は必死に逃げるが、鹿は止まらない。