【前回の記事を読む】父が事故にあったと聞き、病院にかけつけたら――「あれ、光来たのか」ぴんぴんした父の隣には"母の生まれ変わり"の少女がいた
第四章 真実
「おじさん、家が見つからないんだ」
僕はすがるような目を向けた。
「分からんのだよ。みんな真っ黒に焼け焦げて見分けがつかんかった。あちこちに何重にも折り重なったまま放っておかれた遺体が山のようにあって、手がつけられんかった。俺も娘を捜しているが……。どこにいるのか」
涙を流し続けるおじさんの顔が痛ましい。
おじさんだけではなかった。あちらこちらで家族の名を叫び続ける声が耳に入ってくる。絶望した様子で道端に横たわる人もいる。皆一瞬にして家族も家も失ってしまったのだ。
「もう少し、もう少しだけ捜してみます」
「ああ、上野の駅舎は残っていて、みんな行ったようだ。もしかしたら、そこにいるかもしれない。行ってみるといい。どうせここにいても寝る場所はない」
そう言っておじさんは、うつろな目で僕を見つめた。
「ありがとう。行ってみます」
僕は、おじさんに礼を言うと、上野駅に向かって歩きだした。あたりを見回しながら、一縷の望みを胸に家族を捜していると突然、後ろから軍服の裾を掴まれ振り返る。
見下ろすと、小さく痩せ細った男の子が立っていた。灰と垢のせいか、この子も顔が真っ黒だ。
「どうした、一人か? かあちゃんは一緒じゃないのか?」
口を真一文字に結んだまま子供は首を振る。周囲を見ても母親らしき人は見えない。