【前回の記事を読む】暴漢に襲われていた女性が、僕の背後に隠れる。僕は大根を手にするのが精いっぱい。そのとき、窓があいて出てきたのは

第二回 再会

二〇一三年

二週間後、僕と狼男改め、神八太郎は警察署で感謝状を受け取っていた。僕は大根を片手に、その場で立ちすくんでいただけなのに。

女性は幸いにも、腕に浅い切り傷を負っただけですんだ。

「彼が居合わせなければ、わたしは殺されていました」 警察署で何度も僕に頭を下げるので、一撃で犯人を倒した神八太郎と一緒に、僕も表彰されることになった。

記念写真を撮り終えて、警察署を出ようとしたところで、「おい、光」と、春くんに呼び止められた。

春くんは刑事になり、ここの警察署にいる。

母が亡くなった後も、度々家に来ては仏前に手を合わせ、ふくちゃんが振る舞う手料理を褒め称えた。

それに気を良くしたふくちゃんが、「毎日でも来なさい」と言ったので、それ以降、当直勤務以外は家で一緒に食事をするようになった。

僕が小学生の頃は、春くんは休みの日に僕と遊んでくれることが多かった。自転車に乗れるようになったのも、彼のおかげだ。

父とも変わらず仲が良く、二人で居間のテレビを占領し、ゲームに夢中になり、はしゃいでいる。 体が大きく、鋭い目つきの強面だが、僕にとっては優しい家族のようなおじさんだ。

警察官はゲームをしてはしゃいだりしないと思っていた。でもそれは、ただの先入観でしかない。

どんな職業に就いていても、同じ人間なのだ。