母の一周忌、春くんは初めて家に泊まった。
僕と父の寂しさに寄り添うように、母の思い出話に付き合ってくれた。彼が先に眠りにつくと、父は彼の頭上に手を翳した。
三十数えるほどの沈黙が続き、父はゆっくり手を離した。
「やっぱり」
そう言って、穏やかな笑みを浮かべる。
「何が視えたの?」
僕は彼を起こさないよう、小さな声で父に聞いた。
「多木江の前世に俺がいた。もくもくと沸き上がる黒煙を前に、俺が多木江に向かって、『兄貴!』と叫んでた。多木江は俺を、『勝雄』と呼んでいた」
「勝雄って、お父さんの前世の名前だよね?」
「ああ、間違いなく多木江は俺の兄だった」
「じゃあ、僕の伯父さんだ」
「そうだな。初めて会った時から、不思議と親近感が湧いたけど、まさか兄弟だったなんてな」
父と僕は、現世での春くんとの再会に感情が高まった。それからは、春くんを本当の伯父だと思って接してきた。
そんな春くんが、僕らが警察署で感謝状をもらった後に僕を呼び止め、ニヤニヤと口元を緩めながら近寄ってきたのだ。