「うん、わかった。あのさ……」母の顔色を窺いながら、控え目に訊ねる。「お父さんも、人のために頑張ってた?」母の箸から、筍の煮物がするりと滑り落ちた。すぐに拾い上げようと箸を伸ばすが、上手く摑むことができない。「そうよ、お父さんは誰よりも頑張ってた。だから国ちゃんにもできるよね」母から父のことを聞いたのは、これが二度目だ。最初に聞かされたのは、国生が生まれる前に死んだという悲しい現実だった。それだ…
[連載]赤い大河
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小説『赤い大河』【第20回】塚本 正巳
「そんなんだから友達いないんだよ」うっかり口にしてしまった嫌味が、ずっと口の中に残っているようなひどい気分だった。
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小説『赤い大河』【第19回】塚本 正巳
「どれだけ能力を持っていても、その力を自分のためにしか使わない人は、絶対に幸せになれない。...最後には周りに誰もいなくなっちゃう」
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小説『赤い大河』【第18回】塚本 正巳
息子にとっては突然の引っ越し。新しい家族が増えると伝えると息子は「偽者のお父さんならいらない。おじじがいるし」と言い......
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小説『赤い大河』【第17回】塚本 正巳
小学校から家に帰ると部屋は散乱していた。意を決して部屋を進むと口をへの字に曲げ、床ををにらみつける女性の姿が......
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小説『赤い大河』【第16回】塚本 正巳
配られたカードを反す時、同居かそれとも自由か、二人の運命が決する。彼女の手がカードの淵にかかり、未来が決まる瞬間――。
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小説『赤い大河』【第15回】塚本 正巳
突如挑まれたバカラの勝負。「負けたら彼女の世話係、勝ったら......」男として勝負を降りることは出来ない。
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小説『赤い大河』【第14回】塚本 正巳
「それより、どうしてこんなところで働いてるの?」素直な疑問だった。彼女にとっては大切な場所を軽んじてしまった。
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小説『赤い大河』【第13回】塚本 正巳
違法カジノが警察に相談? 「どうせなら、もっとましな嘘をついたらどうだ」 店で暴れる男の最後は......
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小説『赤い大河』【第12回】塚本 正巳
ゲームが進みチップが積み上がる頃、違和感を感じた。ふとあたりを見回すとその正体はすぐに分かった。「お前、何かやってるだろう」と男は言いだし―。
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小説『赤い大河』【第11回】塚本 正巳
「すぐに、気づいてよ」丁寧にひかれたアイラインとおろした髪の毛。食堂で出会った「陰気な女」のアルバイト先は......
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小説『赤い大河』【第10回】塚本 正巳
スリーサイズを聞いた女性からの誘いで、バイト先のカジノバーへ向かう二人。そこは物騒な噂が絶えない区画で、危険な香りが漂い…
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小説『赤い大河』【第9回】塚本 正巳
今の打ち解けた雰囲気なら冗談で済むかもしれない…。「ところでさ、スリーサイズいくつ?」と、さりげなく呟いてみたところ…
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小説『赤い大河』【第8回】塚本 正巳
一人で座る猫背の女。その女に「スリーサイズを訊いて来い」!? 声をかけてみると、尖った視線で白眼視されたが…
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小説『赤い大河』【第7回】塚本 正巳
「五円玉二枚と十円玉、交換してくれませんか」券売機の前に、殺気立った様子の変な女がいた。俺に気が付くと振り向いて…
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小説『赤い大河』【第6回】塚本 正巳
大学生活が名残惜しくなった学生最後の夏休み。「まさかこんな時期に、就職先の発掘?」と友人に横槍を入れられ…
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小説『赤い大河』【第5回】塚本 正巳
もしかして私と彼を別れさせた自称間男は、男ではなく、女かも?ある人物が思い浮かび…
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小説『赤い大河』【第4回】塚本 正巳
妊娠を報告した後、逃げるように家を出てしまった彼。意を決して連絡してみると…
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小説『赤い大河』【第3回】塚本 正巳
妊娠を報告した彼は何故か戸惑っていた。段々と帰りが遅くなり、そして…
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小説『赤い大河』【第2回】塚本 正巳
赤子の安らかな寝顔に、二度と会うことのない彼を思い出して…。
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小説『赤い大河』【新連載】塚本 正巳
カプセルホテルで産まれた命。泣き声を止めようと、その喉に…。