悪気はないといったふうで、千春は口から親指を離した。「思い出しました。たしかに振り返りました。目と目が合ったんですけど、彼女は話しかけてこなかったです。自分のほうから声をかけようかな、と思いましたけど、やめました。向こうから見たらこっちは不審者ですからね。逃げるに決まってます。案の定、彼女はプイッと前を向き、歩いていきました。自分に興味がなかったんじゃないんですかねえ」興味がない? そこだけちょ…
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