天保七年(1836年)十月。意義とカイのふたりは、ひと月かけて江戸から大坂へ辿り着いた。現在の大阪市北区天満、桜の名所で知られる造幣局のある地域だ。そばには大川が流れている。意義たちは目的地に向かう途中の川崎橋から、河原で繰り広げられる非日常的な光景を見た。橋の上には見物客もまばらにいる。「あれは一体何ですかな?」旅商人らしき者が通行人に訊く。「ああ。洗心洞の砲術訓練ですわ」と事もなげに言うから…
[連載]鼠たちのカクメイ
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小説『鼠たちのカクメイ』【第8回】横山 由貴男
「大塩先生もおまえのと同じ銃をお持ちだ。名手だから、あとで教えてもらうといい」どんなひとなんだろう?大塩平八郎って。
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小説『鼠たちのカクメイ』【第7回】横山 由貴男
この男に「死」を宣告する。塾生全員にもだ。利用できるものは全て利用し、あの世で詫びる。それしかあるまい。
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小説『鼠たちのカクメイ』【第6回】横山 由貴男
「拙者を捕らえれば、お主の上司も泥をかぶる…今から覚悟をしておけ」不正した役人の言葉。腐敗は幕閣まで浸透している…?
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小説『鼠たちのカクメイ』【第5回】横山 由貴男
天保の大飢饉…ノンキャリOB・大塩平八郎が、キャリア官僚に殴りかかる!「た、た、立場をわきまえよ!」「なんやとコラ」
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小説『鼠たちのカクメイ』【第4回】横山 由貴男
農村部では毎日200人以上、総人口の4%が餓死した天保の大飢饉。この日の淀川にも、餓死した民衆の死体が…
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小説『鼠たちのカクメイ』【第3回】横山 由貴男
【浪人×殺し屋少年】自分を殺そうとした少年の手に、拳銃を握らせた。「今日からおまえの雇い主は俺だ。」と…
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小説『鼠たちのカクメイ』【第2回】横山 由貴男
野良犬がたむろしている。何かを争って食っているようだ。犬たちを石で追い払うと、そこには真新しい遺体が…
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小説『鼠たちのカクメイ』【新連載】横山 由貴男
尾行の気配に追手をおびき寄せて始末しようと仕掛けさせると十代半ばの少年のようで…