月子は、白鳥さんが洗面所で祈るように手を合わせていた光景を思い出した。「自然も仕事も、人の都合なんて知っちゃいないからね……。日本に戻ってくるまでの間、月一回程度でいいので家の中の空気を入れ替えてもらいたいんです」月子さんがそうしてくれたら、二年後、あの家でちゃんと暮らせる気がするのだとも言った。謝礼は先に渡したいと封筒を差し出した。「お礼なんていらないです。ポスティングのついでにやりますから。…
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