【前回記事を読む】「今日中に出て行かないと売り飛ばすぞ!」――家を出て、怖いおじさんの飲食店で年齢詐称して働いた。寮にも入れてもらっていたが…

東京:フェリーでの逃亡

何年かして自分が痛い目に遭い、初めて自分の愚かさに気が付いた。その当時は、まるで異国の地に旅立つかのように舞いあがり、憎き札幌を脱出した達成感でいっぱいだった。夢と希望に満ち溢れ、怖いものは何もなかった。

新潟でフェリーを降りて、ヒッチハイクで金沢へ行き、片山津の山でテントを張って過ごした。出会う人々は物珍しさからか、とても親切にしてくれた。夏の東尋坊はとても美しかった。北陸がこんなに鮮やかに見えたのは恐らくこの時だけだろう。

八号線沿いにある中古車店。札幌の店にはない雰囲気がてとても新鮮で、私は完全に有頂天だった。まさか、その先にあるものが懲役五年と変わらないような牢獄だとは想像もしていなかった。

その牢獄の中にいた時でさえ、ここが牢獄であるとはそれから数年の間気が付かなかった。罠ではない。きっと行き着く果てに辿り着いてそこから抜け出して今があるのだろう。

果てから果てへ、北から南へ、東から西へ、天国から地獄へ、光から闇へ。どっちにしても全ては過去で、ここが楽園であればそれでいいじゃないか。たとえ最果ての楽園だとしても、いいじゃないか。

ただ、自信を持って言えることがある。懲役には行かなかったけれども五年間の牢獄のような生活で、若気の至りの罪は償ったと思っている。「神様、もう勘弁してください」そう祈り続けた。

「わかったよ」そう言われて東京に来たのだと思っている。