「メーン!」頭上に迫る太刀筋を見切って首を傾ける。右肩の面ぶとんを叩いた竹刀が小気味よい音を体育館に響かせた。鍔迫り合い(つばぜりあい)を嫌い、「引き面」で跳び下がった対戦相手の垂れには福竹(ふくたけ)一中(いっちゅう)、須藤(すどう)のゼッケン。知らない名前だ。追撃はしない。試合は始まったばかり。この程度の相手ならいつでも一本取れる。仕切り直しだ。「小手あり!」背の高い主審が高々と白旗を上げて…
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