僕の大学デビュー天下取り物語

僕には信じられなかった。僕が知ってる満里奈はとても綺麗で、媚びず誇り高く、自分の考えをしっかり持っていて、意見をズバッと言う。とにかく良い女だった。

そのキツネ目オヤジのことは写真でしか知らないが、満里奈がこんなオヤジと二年間も不倫していたなんて受け入れられなかった。

ダンスの先生だからか? めちゃくちゃ優しかったのか? もしかしたたなんか命の危機でもヒーローのように救ってもらったのか?

当時まだ二十一歳の僕からしたら、三十九歳というのはもう立派なおじさんで、そんなおじさんと不倫する女の子の感覚なんて全く分からなかったのだ。

僕はまず満里奈のことを理解したいと思った。今まで僕は勝手に満里奈に対する満里奈像を持っていてそれを信じて疑わずにきたが、その像が崩れた今、僕は満里奈のことが分からなくなっていた。

過去はもうどうしようもない変えられないもので、彼女の過去を気にするなんて馬鹿げているのも分かる。

でも満里奈との未来を考えるためには、満里奈がなんであんなことをしていたのか、当時の満里奈の気持ちをちゃんと聞いて理解しないと先に進めない気がしたのだ。

「なにが好きだったの?」

「えっ?」

「いや、この前の不倫の話。満里奈がその人のこと何が好きだったのかなーって」

満里奈の家で眠りにつく前、僕はたまらず満里奈に聞いてしまった。この話を急に掘り起こされたことにビックリしたのだろう、満里奈は一瞬目を丸くした後答えづらそうに言葉を出した。

「なんだろう……あのときは年上でダンスを教えてくれるってだけで、なんかすごい憧れみたいなものがあって、今考えるとそれはただの憧れで好きとかじゃなかったのかなーって思うけど、その当時は錯覚してたのかな……まだ十七歳だったし……。」

一度聞き始めたらもう止まらず、そこから僕は満里奈にそのときの詳細やいきさつを聞いた。

旅行のときとは違い、お酒も入ってなく全部を曝け出せるような解放感もなかったので、満里奈はいくぶん話しづらそうになっていたが、僕のなんで?という疑問の圧に気圧されたのだろう、言葉に詰まりながらも話してくれた。