【前回の記事を読む】煙の臭いで目覚めると、妻は既に灰になっていた。ベッドに残っていたのは頭の骨と、背骨の一部、下腿の骨だけで…
サイコ4――人体発火
「おまえはこの間、私のことを信じると約束したのではなかったのか」
「あれはもちろん撤回します。私はやっぱり超能力なんか信じません。賽子さん、今まで黙っていましたが、この際はっきりさせましょう。あなたはどうして私の父を騙したんですか?」
「何のことだ」
「とぼけても無駄です。あなたが卒業したという国際超能力研究所は私の父、那花吉郎が美瑛のトムラウシ山に建てたものです。
私も幼い頃、一度だけそこに連れて行ってもらい、河原賽子という少女に会いました。父はあなたのことを本物の超能力者と信じて、実験と研究を続けていた。そしてTV番組に出て、あなたの力を全世界に知らしめようとした。
でもあなたは衆目が集まる中で、父に大恥を掻かせた。結局、超能力少女なんて最初から嘘っぱちだった。あなたがどういうつもりでそんな嘘をついていたのか知らない。
そのお陰で父は失意のどん底で惨めに死んでいった。私と母はインチキ博士の家族と、世間から後ろ指を指されながら、肩身の狭い思いをして生きていかなければならなかった。私はずっとあなたのことを憎んで生きてきたんです。
私が那花吉郎の娘であることを知りながら、どうして今になって、私をここに引き入れたんですか。あなたは一体何を企んでいるんですか。答えてください、賽子さん」
しかし賽子は答えようとせず、超然としてただ宙を見つめていた。
「僕も興味がありますね」
鍬下が言った。
「留置場で不審死した羽牟さんは、最後に古葉月渚という名前をメモに残していた。僕はそれが奇跡の少女の名前なのではないかと思って、実は個人的に調査していたんです。苦労しましたよ。何せ、警察の記録は閲覧できないようになっているし、マスコミの過去のアーカイブからも全て名前が抹消されていたんですから。
でも遂に事故の後、奇跡の少女が初めに引き取られた児童養護施設に辿り着くことができました。そこの園長が彼女のことをよく覚えていて、やはり古葉月渚は奇跡の少女の名前であることが確認できました。
亡くなった両親以外に身寄りがなかった彼女はすぐに里親制度で美瑛町の那花吉郎に引き取られていったそうです。その後に関しては、戸籍を見ても確認ができなかった。
この間、僕が古葉月渚のことを那花小百合さんに訊いた時、彼女はあなたのことを指差した。賽子さん、あなたの本名は古葉月渚、奇跡の少女なんじゃないですか?」
しかし賽子はやはり窓に映る遠くの景色をただ眺めるばかりだった。