「賽子さん、黙ってないで、何とか言ったらどうなんですか」
麻利衣が苛立って催促すると、彼女はようやく振り向いて言った。
「私の記憶は、国際超能力研究所での実験から始まっている。
実験と言っても大したものではない。ただサイコロの目を事前に当てるというものだ。
その時、私はまだ3歳だったが、サイコロの目を当てるくらい造作もないことだった。100回、1000回、1万回繰り返しても、一度も外すことはなかった。おまえの父親は目を輝かして喜んでいた。
それ以外にもいろんな実験をやった。離れた部屋に置かれた絵が何であるか当てたり、彼が頭の中で思ったことを当ててみたり、どれも私にとっては子供じみた遊びとしか思えなかったが、それらが百発百中、いや千発千中であることを見ると、那花博士はまるでこの世の栄華を全て手に入れたかのように高揚していた。
私も彼の期待に応えるようできる限り努力した。何せ彼は私の親代わりだったのだからな。幼い頃の記憶はただそれだけだ。古葉月渚とか奇跡の少女とか、私の知るところではない」
「そんなに優れた能力を持っているのなら、何故TV番組では全ての実験を失敗したんですか」
「私は失敗などしない。随分昔のことなので記憶が定かでないが、おそらく虫の居所が悪く、まともにやる気がしなかったんだろう」
「そんな……」
「その西須悠雅という人物とそこで出会ったんですね」
鍬下が訊いた。
「そうだ。博士は全国の児童養護施設から、才能がありそうな子供たちを掻き集めていた。そのほとんどは愚にもつかないような連中ばかりだったが、悠雅は違った。私とまともに能力を競い合えたのはやつくらいのものだった。ただひどい泣き虫だったがな」
「博士が逮捕されて研究所が閉鎖された後、あなたたちはどうしたんですか?」
次回更新は3月14日(土)、21時の予定です。