【前回の記事を読む】頭の先から股にかけて、真っ二つに引き裂かれてしまった女性…その瞬間、しぶきを上げながら床に倒れ…

サイコ6――怪物の誕生

麻利衣が愕然としていると、賽子の背後の大木の陰から拳銃を構えた鍬下が姿を現した。銃口から硝煙が立ち昇っている。山口の2人の部下が慌てて鍬下に銃口を向けた。

「貴様、どうして……」

「鍬下さん! 大丈夫なんですか?」

「ああ。賽子さんに助けてもらったんだ」

「賽子さんに? どういうことですか?」

「僕は生死の境を彷徨っていた。するといつの間にか、とても気持ちのいい高原にいた。遠くで何かきらきらと光る物が見えたんで、何だろうと思ってそっちへ歩いていたら、急に手を握られた。

振り返ったらそこに賽子さんがいた。そして『龍魔神宮に来い』と言われて、思い切り手を引っ張られて目が覚めたんだ。

病室には誰もいなかったけど、増田先生に訊いたら、那花さんが面会した後に賽子さんが病室に来て僕の手を握っていたらしい。増田先生は何か誤解したようだったけどね。

目が覚めたらこのとおり、いつもより元気なくらいに快復していたんで、病院を抜け出してきたんだ」

麻利衣が呆気に取られていると賽子が言った。

「本来なら1億払ってもらうところだが、何かの役に立つかもしれないと思って快復させておいたんだ。感謝しろ」

その時、瀕死の山口が口を開いた。

「やっぱりな。おまえは他人に助けてもらうしか能のないインチキ超能力者なんだ」

賽子は蔑むような眼で山口を見下ろした。

「勘違いするな。鍬下の弾丸は外れている。おまえの腹に当たったのは私が弾き返した弾丸だ」

「負け惜しみを……」

その時、突然、社務所が爆発し、劫火に包まれた。驚いて爆風に身を屈めていると、燃え盛る炎の中から灰色の肌と黄金の瞳を持つ白髪の少年が悠然と歩み出た。

「だ、誰?」

麻利衣が目を丸くして言った。

青竜はゆっくりと目の前にいる面々を眺めていたが、すぐに賽子に目を留めた。

「お目にかかれて光栄です。お母様」

彼は恭しく頭を下げた。

「お母様?」

麻利衣が素っ頓狂な声を上げた。賽子は目を細めて冷淡に言った。

「おまえのようなちんけな子供を孕んだ覚えはないが」

その言葉に青竜が怒りで目をかっと見開くと、凄まじい衝撃波が生じ、賽子は後方に吹き飛ばされ、大木の幹に激突し、幹はへし折れ、木は倒れた。

「賽子さん!」