無作為振り分け試験は、英語でRCT(Randomized Controlled Trial)といいます。
EBMとは簡潔に言えば、このRCT研究による結論を証拠とする医学です2。現在の医療では新薬の認可から保険診療の点数まで、EBMの影響は絶大なものがあります。実際にEBMの世界では、かつて臨床医学界に君臨した「ベテラン医師や大家の意見」はエビデンスレベル「最低」に没落しました。
ご注意いただきたいのは、動物実験の結果もそのままでは評価されないという点で、ノーベル賞級の研究結果に基づいた治療でも人で効果が実証されなければ「エビデンスなし」となります。最近、痛みの分野に限らず、「動物実験のエビデンスがあります!!」と喧伝する〝新治療〟が散見されますが、臨床研究のエビデンスがなければダメで、本当に効くかどうかはわかりません3。
逆に「なぜ効くのかわからない治療」「動物実験で確認できない治療」であっても、RCTで有意と判断されれば「エビデンスあり」と評価されます。
このように、治療のエビデンスとは「動物実験の証拠のことではなく、統計学的に証明された臨床研究の証拠」のことです。
「治療効果の科学的エビデンス」とは「動物実験が行われたどうか」ではなく、「患者さんを対象に統計学的研究が行われ、有効性が証明されたか」をいっています。ことはとても重要な点なので、よく覚えておいて下さい。
1 「ラーメン屋のオヤジ理論」とほぼ同じ。
2 複数のRCT研究を総合して分析した「メタアナリシス」という研究もあり、〝EBM界の最高峰〟とされる。エビデンスの取り方はRCTだけではないが、いずれも統計学の方法論を駆使して「偶然ではない結果」であることを証明する。
3 そうした治療は、健康保険の対象とはならないので自由診療で行われている。
【参考文献】
⑵ 松村むつみ『「エビデンス」の落とし穴「健康にいい」情報にはランクがあった!』青春出版社、2021年
次回更新は7月21日(月)、8時の予定です。