「どうみてもゴルフ場のキャディさんの格好じゃない」ああ、そうか、隣の喫煙所の婆さんのことか。俺は、というより俺たち一家は、ゴルフになどまるで縁がないが、そう言われてみればたしかにそんな格好だよなと納得した。妙に派手な色合いの上下も、帽子の後ろ側のつばが肩まで垂れてるのも、まさに妹の言う通りだ。女というのはこういうときにも、他人の服装の観察だけはしっかりとするものらしい。「だけどキャディにしちゃ、…
[連載]春のピエタ
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小説『春のピエタ』【第6回】村田 歩
犯行前ノイローゼ状態で何度も親父にSOSを出していたお袋。それを一度も正面から受け止めようとしなかった親父
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小説『春のピエタ』【第5回】村田 歩
人間を徹底して効率的に管理する、近未来要塞のような建物だった。この東京拘置所に母はもう居ないということは分かっていたが…
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小説『春のピエタ』【第4回】村田 歩
「いつの頃からか、家族の前であの女のことを、お袋、と呼ぶようになった」再会の動機は、純粋な好奇心だった…
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小説『春のピエタ』【第3回】村田 歩
緊張からか急に無口になってきた妹。無理もない。十三年ぶりの親子対面なのだから…
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小説『春のピエタ』【第2回】村田 歩
「おかあさんが自殺したの!」しばらくの沈黙のあと、いつ、と押し殺した声がした
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小説『春のピエタ』【新連載】村田 歩
十四年前の悪夢再び…「おかあさん!」叫ぶ私。「中に入るんじゃない」と仁王立ちの父