先導して前を歩いていた親父が、ふいに歩道を逸れ、広いパーキングエリアへ入っていった。俺と優子を振り向きもせず、大きなえび茶色の建物へ向かって歩いていく。東京では見かけない名前のホームセンターだ。まだ午前九時をまわったところだが、駐車場にはもう何台も車が停まっていた。二重扉になった入り口を入ると、名産品や地酒の並んだ一角だった。目の前の棚に、見慣れた縦長の菓子箱が山型に積まれている。難しい名前のつ…
[連載]春のピエタ
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小説『春のピエタ』【第3回】村田 歩
緊張からか急に無口になってきた妹。無理もない。十三年ぶりの親子対面なのだから…
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小説『春のピエタ』【第2回】村田 歩
「おかあさんが自殺したの!」しばらくの沈黙のあと、いつ、と押し殺した声がした
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小説『春のピエタ』【新連載】村田 歩
十四年前の悪夢再び…「おかあさん!」叫ぶ私。「中に入るんじゃない」と仁王立ちの父
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