劉生 ―春―

「おかあさん、フォークリフトの資格取ったんだってね」

俺はぎょっとして優子を見た。驚いたのは俺だけじゃない。女も親父もびっくりしている。しばしのあいだ、四人の上に沈黙が落ちた。優子だけが平然としている。

「よく頑張ったよな、おかあさんも」

親父が戸惑いがちに沈黙を破った。女がほっとした表情になり、おずおずと優子に視線を移した。

「でも、一度じゃ受からなかったのよ。二度目でやっと」

「すごいね。おとうさんから聞いてびっくりした。男の人の仕事だと思ってたから」親父がすこし腰を浮かして、優子と女と、三角形を描くように座り直した。つまり、俺に少し背を向けた。

「おかあさんはね、戻ってきてから働くっていうんだよ」

「え、そうなんだ」

「もう働き口も決まってる」

「どこ?」

「島田さんのとこ」

「え! 島田さん、承諾してくださったんですか?」うつむいていた女が顔を上げた。

「ああ、ふたつ返事だったよ。待ってますと伝えるように言われた」