【前回の記事を読む】まだ幼い妹を憎み、重ね合わせた…見殺しにした女の子と。丸裸に剥かれ、ぷらぷら揺れる小さな足に、黄色の靴下。「妹へ。私があなたたちと一緒に暮らせないのは、あなたたちのせいです」思わず書き出した一文へ横線を引き、急いで消した。便せんがぐしゃぐしゃにされる音が部屋の中に虚しく響く。何とか生活を切り盛りしようとするが、私たちの暮らしは貧窮をきわめた。それが自己の存在意義を証明するとで…
[連載]ツワブキの咲く場所
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小説『ツワブキの咲く場所』【第17回】雨宮 福一
ペットのハムスターを庭に生き埋めにした。手のひらに、脈打つ小さな心臓。皆が私の方を見た。私を、見てくれたのだと思った。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第16回】雨宮 福一
まだ幼い妹を憎み、重ね合わせた…見殺しにした女の子と。丸裸に剥かれ、ぷらぷら揺れる小さな足に、黄色の靴下。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第15回】雨宮 福一
「韓国へ行くの。聖地巡礼をしましょうね」激情が込み上げそれを拒否した。母に飛び掛かり、体を叩き続けた。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第14回】雨宮 福一
「うっわ、だからあいつ、キムチ臭いんだ」小学校の休み時間、それは唐突に始まったいじめだった。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第13回】雨宮 福一
「遊びに、行くのですか?」教会へ行くのって、そんなものなのか。キリスト教から想起するのは、かつて関わったカルト教団。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第12回】雨宮 福一
キリスト教。何か一つのことを信じる場。宗教。私にとって、どれ一つとっても、避けたい存在だ。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第11回】雨宮 福一
十四歳で統合失調症と診断されてから、警察沙汰になったこともあった。医師の提案で、家族と離れ別々に生活していくことに。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第10回】雨宮 福一
男たちの群れの中、無抵抗に、人形のように揺られる少女の脚を見ていた。あの日救えなかった彼女と妹を同一視するように…
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小説『ツワブキの咲く場所』【第9回】雨宮 福一
久しぶりに書いた妹の名前。できない気持ちの塊が音や匂いを引き連れて、こちらへ近づいてくるような気配さえした。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第8回】雨宮 福一
統合失調症に苦しみ、生きていた。誰かに自分の考えが読み取られているような、そんな感覚にとらわれていた。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第7回】雨宮 福一
父と母の出会いのきっかけを妹にどう伝えるか悩み…そんな私のところへやってきたのは親友の「永ちゃん」だった
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小説『ツワブキの咲く場所』【第6回】雨宮 福一
宗教2世として生まれた彼女に選択肢はなかった。――「異端者だ」
ある日、老人をおじいちゃんと呼んだ少女の体は血と痣まみれになった。 -
小説『ツワブキの咲く場所』【第5回】雨宮 福一
統合失調症で離れて暮らす兄への手紙:三年以上返信がなければ、お兄さんにとっても話しにくいことなのだと思って、自分の心のうちにしまって生きていきます。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第4回】雨宮 福一
床へ降り立った足は、恐ろしく白く、少女の足元に影はない。統合失調症を患ってから、彼女が傍に現れるようになった。
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小説『ツワブキの咲く場所』【第3回】雨宮 福一
「お母さん!」男から私を奪い返しその場から離れるのに必死な母。男たちは女の子を連れて草むらの間へと見えなくなり…
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小説『ツワブキの咲く場所』【第2回】雨宮 福一
男たちの群れが、無抵抗の少女の体を肉の塊のように扱うのを、私はただ見ているより他なかった。
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小説『ツワブキの咲く場所』【新連載】雨宮 福一
夢で見た光景―それは自らに起きた過去の光景だった。母と手をつなぎながら女の子が着るワンピースを着せられた私は待っているように言われたアパートの前で待ちくたびれて…