「……夢だ」ぽつり、私は呟いた。ベッドの上。いつもと同じ一日の始まり。ダウンジャケットを羽織って、廊下に出る戸を押し開けたら、きい、と音がした。「喉、渇いたな」カーテンの隙間から、太陽の光が差し込む。ついカーテンを開けて外を見た。木の枠に縁取られた窓からは、ざわざわ揺れる雑木林、そして手入れの行き届かない伸び放題の松が見える。ありふれた一日の始まり。階段を下りる。ふすまで仕切られた部屋を抜け、キ…
[連載]ツワブキの咲く場所
-
小説『ツワブキの咲く場所』【第4回】雨宮 福一
床へ降り立った足は、恐ろしく白く、少女の足元に影はない。統合失調症を患ってから、彼女が傍に現れるようになった。
-
小説『ツワブキの咲く場所』【第3回】雨宮 福一
「お母さん!」男から私を奪い返しその場から離れるのに必死な母。男たちは女の子を連れて草むらの間へと見えなくなり…
-
小説『ツワブキの咲く場所』【第2回】雨宮 福一
男たちの群れが、無抵抗の少女の体を肉の塊のように扱うのを、私はただ見ているより他なかった。
-
小説『ツワブキの咲く場所』【新連載】雨宮 福一
夢で見た光景―それは自らに起きた過去の光景だった。母と手をつなぎながら女の子が着るワンピースを着せられた私は待っているように言われたアパートの前で待ちくたびれて…