川田は全身をじたばたともがき、何とか腕を突っ張って雪中にはまった胴体と足を引き抜いた。そして、数歩下がってから自分の胴体が突き抜いた穴を眺めた。穴の先には、大人が一人すっぽりとはまりそうな空洞が広がっていた。空洞の底には雪の下の土と草木が微かに見えていた。「シュルントか?」「シュルントですね。下まで空いています」シュルント(ベルクシュルント)とは、クレバス様の雪の裂け目のことで、大きいものであれ…
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小説『浜椿の咲く町[人気連載ピックアップ]』【第8回】行久 彬
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エッセイ『ALS―天国への寄り道―[人気連載ピックアップ]』【第23回】島崎 二郎
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