*
父の入院から一週間が経(た)った。
病院のソーシャルワーカーの紹介で、白ゆり訪問看護ステーションの松野所長とケアマネージャーの馬渕(まぶち)さんという方がやってきた。二人ともまだ若くてかわいい。
尻尾を振って出てきたクッキーに、「きゃあかわいい」と黄色い声をあげていた。
ここで母が僕に命じる。
「はやと、みなさんにお茶を出しなさい」
ゆっこが二人を僕に紹介した。
「こちらの馬渕さんがさっちゃんの担当で、こちらの松野所長がじぃじのほう」
よろしくお願いします、と会釈。一同そのままリビングへ行き、テーブルを囲い着席。
早速、松野所長が話を切りだした。
「お父さまはご自宅での食事のことをご心配されているようです」
「母がまったく作れなくなってしまって、弟が弁当を買ってきてるようです」
「いえ、僕は料理を一応はしています。肉じゃがやカレーくらいですけど、舌平目のムニエルも作れますし、ステーキも焼けます」と僕。
ゆっこが割って入る。
「肉じゃがといっても、味はちょっと……」
「訪問診療の先生が月に二回伺(うかが)い、それにプラスして訪問看護を少なくとも週に二回行なうというご希望ですね」
「お風呂とかに入るのもヨタヨタしているようなので、入浴介助もお願いできると助かります」
「訪問看護でお風呂のお手伝いはできます。病状が落ちついていれば、ヘルパーでもできます」
「きょう、お風呂入っているの? ねえ、はやと」
母が僕にしつこく話しかけ、会話を邪魔する。
ゆっこが言った。
「母のほうは足から血を流していたり、耳から血を流していたり……。怪我をしていても気づけていないことがあります」
僕が補足する。
「姉が先週来るまで十日間風呂に入っていませんでした。下着もずっと取りかえていなくて」
「弟もはっきり言って使えない部分があるので。機能していない部分があるんです」
【イチオシ記事】ホテルへ向かう車で何度も「まずいなあ、はまっちゃうよ」…選ぶ相手は既婚者ばかりだった。
【注目記事】58歳の誕生日、8時間の出張サービス利用で息子ほど年の離れたセラピストとホテルへ。1時間もしないうちにシャワーを浴び…
ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp