【前回の記事を読む】毎晩20時を過ぎると、母は5分おきに僕の名前を呼び続ける…だがその内容は、近隣に聞こえるような大声で僕の悪口を叫ぶもので……
第一部 父
在宅医×訪問看護師×ヘルパー
父が入院している間に、病院のソーシャルワーカーとゆっことの話しあいで、やはり行政が入らないとだめだと言うことになった。
父には〈白ゆり訪問看護ステーション〉の看護師が週に二回来て状態を把握し、月に二回来る在宅医と密に連絡を取りあう。
ヘルパーが週に二回家に入り、掃除と、父と母の分の夕食を作る。母は週に三回デイサービスに通い、日中を過ごす。そういうことになった。
三日後、病院のソーシャルワーカーから、僕と母それぞれに連絡がきた。
「もしもし。わたくし、がん研のソーシャルワーカーです」
「池田です」
「ご長男さまでいらっしゃいますか?」
「次男です。母はいま何もわからない状態で、
『きょう何日だっけ?』とか、『薬はもう飲んだの?』とか、
同じことを五十回も訊(き)いてきます」
「そうですか。お母さまの認知症は進んでいるようですね」
「はい。それで、僕からずっと離れないんですよ。僕が一階にいると一階にいて、二階に行くと二階についてくるんです。
それで、僕の部屋の隣がトイレなので、ずっとトイレの便座に座って話しかけてくるんですよ。
二分おきにドアを開けてきて、『じぃじはいつ退院するの?』とか、『退院したら教えてね』って言うんですよ、何回も」