1 変化の激しい時代に向けた教育
1-3 本書で取り上げるSTEAM教育
1-3-2 A(アート)(芸術)とE(エンジニアリング)を重視する
本書では STEAM のうち、特に A(アート)(芸術)とE(エンジニアリング)の2つを重視しました。
その際、「役に立つ」ということは確かに大切であるとは思いますが、むしろ、単純に「欲しい」とか「面白い」「希少性」といった、いわば、何らかの「意味がある」という、感性に関わる、「価値」ともいえる側面を重視したいと考えます。それが創造性を養う上で重要であると考えるからです。
例えば、燃費のよいエコカーがあれば、当然それは有用、役に立ちますから、世の中にはそれだけがあれば実用上問題はありません。しかし、高級なスポーツカーが存在し、それを求める人がいることを考えると、両者は同じ自動車でありながら、まったく異なった意味があるといえます。
この「意味がある」が、Aアート(芸術)とも関わると考えます。これは、「『意味がある』にいこうとすると、アート、直感、センス、質を上げる、個人の想い、ストーリーというものが大事になってきます」1という主張からもいえることです。「『役に立つ』は、人工知能が得意とすること(中略)、『意味がある』のできる人間をどう育てるのか」2ということです。
あるものが「役に立つか/立たないか」は、短期間では判断できないことがあります。例えば、ファラデー3が電気の実験について紹介しているときに、「それが何の役に立つのですか?」と聞いた聴衆がいたことは有名な話です(現代において「電気は何の役に立つのですか ?」という質問は、まず聞かれないでしょう)。