物流の2024年問題とその影響
物流危機の原因として、いわゆる「物流の2024年問題」が取り上げられることが多い。
2024年問題についてはメディアで繰り返し報道されているため、詳しい説明は割愛するが、簡単に言えば、ドライバーの残業時間(時間外労働)の上限が、原則として年間960時間までに引き下げられることにより、ドライバーの労働時間を短縮することが必要となるという問題である。
言うまでもなく、労働時間の減少は輸送能力の低下につながる。規制強化によって、ざっくりと言えば1ヶ月に10時間程度残業時間を減らす必要があるのだが、これは長時間残業を前提とした運行が多い長距離トラック運行を中心に、大きな影響を与える。
そのため長距離トラック輸送に頼らざるを得ない地域や産業を中心に、モノが運べなくなる事態が懸念されているのである。
このように、重大な影響が懸念される2024年問題だが、その際、忘れてはならないのは、2024年問題への対策によって輸送能力が減少するだけでなく、ドライバーの収入も減少するということである。
ドライバーの収入は、残業手当の占める比率が大きいのだが、残業時間の抑制は残業手当の削減に直結する。これによって、ドライバーの低収入化にさらに拍車が掛かることが、新たな懸念材料として浮上しているのである。
そもそも物流危機の原因はドライバーが集まらないことであり、その根本的な原因は、ドライバーの給与の低さ、勤務時間の長さといった、待遇面の問題である。
トラックドライバーの労働時間は他産業の平均よりも2割程度長い一方、給与は他産業よりもかなり低い。
少子高齢化によって労働人口が減少する日本で、このように待遇面で見劣りする職種に人が集まらないのはある意味では当然である。
この状況を踏まえると労働時間が削減されるだけで、収入向上につながらないのでは意味がない。労働時間だけでなく収入も他産業並みに改善しない限り、現下の物流危機が解消しないことは、火を見るより明らかであろう。