第2章 物流・SCM軽視の実態
2-1 物流危機の背後に垣間見えるドライバー軽視
ドライバーの待遇改善には生産性向上が必要
映画などで見るトラックを思い浮かべていただくと分かるとおり、米国のトラック輸送の主流は大型トレーラーである。
これらの大型トレーラーは、日本で主力の4トン~10トントラックよりも遙かに積載重量が大きく、統計から推計すると、その差は平均で約2倍程度に達する。そして積載の差がドライバーの生産性に直結することは、容易に想像できるだろう。
米国の高い給与は、このような生産性の高さに裏打ちされているのである。生産性の違いを無視して、給与の高さだけを日本でまねしようとしても、土台無理な話であり、まずは生産性を引き上げることが必要である。
日本のトラック輸送の生産性が低迷している原因は、輸送ロットの小ささ、納品先での長時間待機の発生といった、輸送条件の悪さである。そしてこのような輸送条件を生み出しているのは、トラック会社というよりは、製造業や流通業といった荷主企業である。
このように考えると、荷主が物流効率化に積極的に取り組まない限り、トラック輸送の抜本的な生産性向上は難しいことが分かる。
現実には、実務を物流会社に丸投げする荷主企業が多いわけだが、その理由を突き詰めると荷主の物流軽視の思想に行き当たる。この思想を転換し、物流に真剣に取り組むことが、物流生産性向上の必須条件である。
そのような荷主の意識転換を抜きに、ドライバーの待遇改善は実現できない。
職業威信スコアに見る「ドライバー軽視」
ドライバーの待遇改善は、物流危機を乗り越えるための必要条件である。ただし、ドライバー不足を解消するうえで、もう一つ忘れてはならない課題がある。それは、ドライバーの社会的地位の向上である。
ドライバーの労働にはブラックなイメージが付きまとっており、残念ながら社会的にリスペクトされる職業とは言いがたい。
仮にドライバーの給与が「他産業並み」に引き上げられ、「そこそこ稼げる」程度の報酬を受け取れたとしても、ドライバーを希望する若者が増えるとは考えにくい。
今後、長期的に若年労働力の不足が続く日本社会では、社会的にリスペクトされない職業はますます避けられるはずだ。
その意味で、待遇改善はドライバー不足解決の必要条件ではあるが、十分条件ではない。職業としての魅力を高め、社会的地位を向上することにも取り組む必要がある。