ドライバーの社会的地位を示すデータとしては、職業の社会的地位を調べた「社会階層と社会移動全国調査(SSM調査)」というものがある。

写真を拡大 図表5   職業威信スコア(1975 年 SSM 調査)背景色はエッセンシャル・ワーカーのうち代表的なものを筆者が例示したもの
 資料:「1975年SSM全国調査報告」1975年SSM全国調査委員会編
注・現代では不適切と思われる表現が含まれるが、原点のままの記載とした。
 

SSM調査は1955年から10年ごとに実施されている調査である。研究者による共同研究として実施されているSSM調査だが、サンプル数の大きさなどは公的統計に匹敵する規模であり、信頼性の高いデータを提供している。

SSM調査では、回答者による職業のスコアリングデータをもとに、「職業威信スコア」というデータを公表している。

図表5では1975年SSM調査の職業威信スコアを引用している。1975年という古いデータを引用しているのは、これ以降の調査では、ドライバーを代表する職業名称が「自動車運転者」から、「バス運転手」に変更されているためである。

バス運転手は人数も少なく、業務内容もドライバー職を代表しているとは言いがたい。このような事情があることから、1975年という古いデータを引用したのだが、職業威信スコアは長期的に順位が安定していることが知られており、大まかな傾向を把握するには充分である。

さて、図表5はスコアが高い順に並べたものであり、概ね左が高スコア、右が低スコア、真ん中が中くらいという区分だが、このうち自動車運転者は「右」の中でやや上位といった位置づけである。

このように、データから見てもやはり、地位が高いとは言いがたいことが分かる。

エッセンシャル・ワーカーの中でも低いドライバーの地位

ところで、コロナ禍においてテレビなどで度々使われたことで、広く知られるようになったのが、欧米発祥の「エッセンシャル・ワーカー」という言葉である。

医療・介護や保育、さらには食料生産、消防・警察のように、社会の維持運営に必要な労働者のことを、尊敬を込めてエッセンシャル・ワーカーと呼ぶ。エッセンシャル・ワーカーは社会の維持に必要であるものの、給与等の待遇面では恵まれない職業も多い。

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