【前回の記事を読む】消費財メーカーのグローバルトップ上位30社のうち13社がCSCO等を設置

第2章 物流・SCM軽視の実態

2-3 物流・SCM担当役員(CSCO)の不在

 

図表8は、米国における代表的な物流・SCM団体である、CSCMPが行った、団体会員の属性に関する調査結果である。CSCMPの会員は主に荷主企業等に属する物流専門家であることから、各企業の物流責任者の職位をある程度反映していると思われる。この結果によると、回答者の職位のうち、最も多いのが「Director」である。

この調査では取締役に相当する「Director」と、執行役員に相当する「Officer」とが区分されていないのだが、いずれにせよ、Director以上の「役員クラス」が大半を占めているということになる。なお、これはあくまで会員属性を示したものに過ぎず、正確な統計データではない。その意味で「傍証」でしかないのだが、役員クラスが物流・SCMを担っている実態の一端を反映していると思われるのである。

日本では「物流・サプライチェーン担当は役員になれない」

一方の日本ではどうだろうか。日本企業では、物流を所掌するのは多くの場合、物流部長など「部長級」または「課長級」の企業が大半である。「CSCO」に相当する執行役員(または取締役等を含む役員)クラスが担うケースは希である。この傾向は、データによって明確に示される。 週刊ダイヤモンドの2022年3月12日号には、物流に関する特集記事の一環として上場企業の開示資料をもとにした「物流担当役員リスト」が掲載されている。

これによると、「役員情報を開示している上場企業3900社のうち、物流関連の担当が明示されている役員」の数は、わずか121名に留まっている。この数でも十分に少ないが、実際にはこの121名にはCSCOには該当しないようなケースがかなり含まれている。個別に役職を確認すると、例えば、「IT企業のSCM営業担当役員」のようなケースや、「購買・品質・CSR・物流担当役員」などのように、兼任者の所掌事務の一部に物流やSCMが含まれているケースが多数存在しているのである。

 

そこで筆者でこれらを除外し、純粋なCSCOに相当すると思われるケースのみをリストアップしてみた(図表9)。その結果、CSCOに相当するケースは、わずか50社程度に留まるという結果となった。3900社に上る上場企業には、IT企業など物流に関係しない企業が含まれるため、CSCOの正確な設置率を導き出すのは難しいのだが、仮に2000社程度を母数と考えると、CSCOの設置率は2~3%程度しかないことになる。