【前回の記事を読む】企業の物流軽視が表れ始めたのはバブルの崩壊? 70年代急激に普及した「物流」だが、景気が悪くなると......

第2章 物流・SCM軽視の実態

2‐4 リストラ対象と見なされる物流          

電機系物流子会社はほとんど現存せず

かつて電機メーカーの物流を一手に担い、重要な役割を果たしていた物流子会社だが、その多くが売却(分のすべてまたは一部の売却)または廃止されてしまうことになる(図表10)。

富士通が富士通ロジスティクスを2004年に、米エクセル(現DHLグループ)に売却したのを皮切りに、三洋電機(2010年~)、N E C(2013年)、パナソニック(2014年)などが子会社を売却等した結果、現在まで子会社を継続保有(持分の過半を保有)している大手電機メーカーは、三菱電機など数社だけに留まる。

物流子会社はなぜ「売却」されたのか?

さて、各社が物流子会社を「売却」(廃止等を含む)するに至った要因は、様々である。そのうちの一つは、モノづくりを縮小したために、物流管理の必要性自体が薄れたことである。事業領域をシステムインテグレーション分野にシフトしつつあった富士通などはその代表例と言えるだろう。

ただし、この要因ですべてを説明できるわけではない。高度な物流が求められる重電機器、電設資材や住設機器を製造している企業もあり、物流管理の必要性の低さだけでは説明できないからである。

このように考えると、この時期に企業が受けていたリストラの圧力を抜きにして、この間の動きを理解することはできない。

2000年以降に日本経済が直面した状況と、それによって企業が余剰人員および固定費削減による財務改善に迫られていたという事実を無視して、物流子会社売却等の広がりを理解することは難しい。この点を理解するため、この間の経済状況を簡単に振り返っておきたい。

2001年にいわゆる「ITバブル」が崩壊すると、それまで2万円台を付けていた日経平均株価は、2003年に7600円前後を付けるまで下落を続ける。小泉政権末期の2005年前後には一時的に経済状況が改善するものの、2008年のリーマンショック(またはサブプライム危機)を契機として再び低迷期に突入する。

その後も、2011年の東日本大震災による打撃や、1ドル75円台に至る超円高によって、特に輸出企業の業績は深刻な不振に陥ることになる。なお為替が本格的に円安に転じるのは、日銀が量的・質的金融緩和措置の拡大に乗り出した2014年末以降のことである。