第2章 物流・SCM軽視の実態

2-1 物流危機の背後に垣間見えるドライバー軽視

ドライバー不足が招く物流危機

 

物流軽視のマイナス面が最も先鋭に現れているのが、「ドライバー不足によってモノが運べない」という「物流危機」の問題である。筆者は全国のトラック会社との交流の機会が多いが、ドライバー不足は年々悪化していることを実感している。

近年では、東京や大阪は言うに及ばず、北東北や南九州のように求人が決して多いとは言えない地域でも、ドライバー確保は至難の業となっている。

かつてドライバーの募集といえば「ハローワーク一択」だったが、最近はそれでは全く集まらなくなっている。そのためトラック会社の多くは、有料の求人媒体での募集に、多額のコストを費している。

また、ドライバー同士の紹介に紹介料を払ったり、入社祝い金を設定したりするのも、もはや業界内では「常識」となっている。

 

ところがこのように募集コストをかけても、思いどおりに人材は集まっていない。そのため募集のハードルを下げて何とか人数を確保しているのが実態である。

その一例が、高齢・未経験者採用である。トラック未経験者の採用は事故リスクへの懸念があるため、後ろ向きな企業が多いのだが、最近では「60歳代までなら未経験者でも可」とする企業も少なくない。

これは一例だが、これほどまでに人材が逼迫しているのである。このようなドライバー不足によって、トラック会社は車両を稼働させることができず、また、荷主企業は商品を運べないという問題が生じているのである。