第2章 理論を少しずつ実践として具現化していく──主に楽器を用いた授業を例に

2-1  必要性を感じながら技能を習得していく展開(リコーダーを用いた活動の例)

音楽が技能教科と称されることの問題点については〈1-4〉で触れた通りですが、それは能力の4つの観点(〈3-2〉等で触れます)のうちの一つを指すにすぎず、結局は、ある楽曲の演奏が目的とされ、その出来栄えで評価が決まるという、断片的な技能を向上させることに留まることになるからです。

しかも、声量や声の音色等の身体的条件も影響するわけですが、それは必ずしも学習によって克服・向上できるものでなく、学校のお勉強の対象としてふさわしいとはいえません。

身体的条件等の影響で、自分ではよい出来栄えの演奏ができなかったとしても、深く味わったり他人に示唆を与えたりできる知識や、創作する思考、そして何より音楽活動への強い関心・意欲という重要な各能力を備えれば、いわば名選手でなくとも名コーチであることと同様の総合的な評価を受けられることが大切です。技能に対する苦手意識から音楽を敬遠することもなく、全人的な教育にとって重要な意義があるといえます。

学習のためには、また、様々なことを実現していくためには技能が必要です。その技能は、必要性もないのに技能訓練として独立して行うばかりでは「断片的な技能」となってしまいます。算数における割り算の学習に置き換えるならば、「○÷△」という計算問題を延々と解き続けるようなものです。

実際問題、日常生活でそうした手計算を行うことはほぼなく、電卓を利用することが多いわけですから、むしろ価値はそこだけに求めるよりも、学習としてもっと豊かにすることを考慮すべきです。その際、例えば、次のような「追究型ドリル」1)という出題方法が効果的であるといえます。

教師:1÷7を計算してみよう

児童:0.142857142……割り切れないや

教師:では、2÷7は?

児童:0.285714285……また割り切れないや

   (黒板に並べて書いておく)

教師:次、何て書くと思う?

児童:÷7!

教師:はい、では、3÷7を解いてみよう

児童:……