第1章 「楽しさ」と「実感」がある授業のために…

1-1 学習指導要領解説の冒頭に書かれていること

学校のお勉強は、学習指導要領1に沿って行われます。ほぼ令和の時代の幕開けとともに運用されることとなった第9次『学習指導要領解説』の冒頭(第1章 総説1改訂の経緯及び基本方針(1)改訂の経緯)には、次のように書いてあります※2

今の子供たちやこれから誕生する子供たちが、成人して社会で活躍する頃には、我が国は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少、グローバル化の進展や絶え間ない技術革新等により、社会構造や雇用環境は大きく、また急速に変化しており、予測が困難な時代となっている。

また、急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎えた我が国にあっては、一人一人が持続可能な社会の担い手として、その多様性を原動力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。

こうした変化の一つとして、人工知能(AI)の飛躍的な進化を挙げることができる。人工知能が自ら知識を概念的に理解し、思考し始めているとも言われ、雇用の在り方や学校において獲得する知識の意味にも大きな変化をもたらすのではないかとの予測も示されている。

このことは同時に、人工知能がどれだけ進化し思考できるようになったとしても、その思考の目的を与えたり、目的のよさ・正しさ・美しさを判断したりできるのは人間の最も大きな強みであるということの再認識につながっている。

このような時代にあって、学校教育には、子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。


※1 文部科学大臣により告示される教育課程の基準。文部科学省ホームページ「学習指導要領とは何か?」には、「全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省では、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています。(中略)各学校では、この『学習指導要領』や年間の標準授業時数等を踏まえ、地域や学校の実態に応じて、教育課程(カリキュラム)を編成しています。」とあります。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/idea/1304372.htm[2022.3.9.18.27.閲覧]

※2 『学習指導要領解説』の総則編をはじめ、各教科等の各編でも同じことが書かれています。ここでは、文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説音楽編』(東洋館出版社、2018)を参照しました。こうした学習指導要領解説を読む際には、いきなり各教科の内容の部分に目が行きがちで、単なる前置きのように思えることもあるかもしれませんが、前提・基底を認識するためにも重要な文章であるといえます。