第2章 理論を少しずつ実践として具現化していく──主に楽器を用いた授業を例に

2-1-1 導入時の活動

教師:先生と同じように吹いてみよう〔教師:ドー・ドー・ドー・ウン〕→〔子ども:ドー・ドー・ドー・ウン〕→〔教師:ドー・ドド・ドー・ウン〕→〔子ども:ドー・ドド・ドー・ウン〕……  

教師:先生と違うように吹いてみよう〔教師:ドー・ドド・ドー・ウン〕→〔子ども:ドー・ドー・ドー・ウン〕→ 〔教師:ドド・ドド・ドー・ウン〕→〔子ども:ドー・ドー・ドド・ウン〕……

教師:今やったのを、速くしてみるよ ! ……ン〕……

続いて、「(高い)ド4 」と「(高い)レ4 」の2音で行います(【図3】参照)。

【図3】ドとレの指遣い・ドとレの2つの音で即興演奏をする様子

教師:先生と同じように吹いてみよう〔教師:ドー・レー・ドー・ウン〕→〔子ども:ドー・レー・ドー・ウン〕→
〔教師:レー・ドド・レー・ウン〕→〔子ども:レー・ドド・レー・ウン〕……

これを、教師が後ろを向いて行えば、音を敏感に聴き取りながらの活動となりますし、子どもたちが教師の模倣をしている間に、教師は次のふしを(子どもたちが前のふしを吹いているところに重ねて)吹くと、異なったふしを頭の中に描くような力も鍛えられます。

教師:先生と違うように吹いてみよう〔教師:ドー・ドド・レー・ウン〕→〔子ども:レー・ドー・レレ・ウン〕→ 〔教師:ドド・レー・ドー・ウン〕→〔子ども:ドー・ドー・レー・ウン〕……

教師:先生が○○ちゃん、あそびましょ、とやるので、いいよ、とか、まっててねー、という具合に、ドとレを組み合わせてお返事してね〔教師:レー・ドー・レー・ウン・ドレ・レド・レー・ウン〕→〔子ども:レー・ドー・レー・ウン〕……

教師:今やったのを、速くしてみるよ !

教師:みんなでリレーしてみよう……

こうしたことを、次第に教師抜きで、子どもたち同士で自由に行うことも忘れないようにします。続いて、「ラ」を追加します。その次は、「ソ」を追加します。

その次は、「ミ」です。「ファ」にしないのは、理由が二つあります。一つは、ここまでの音で五音音階ができ、「ラ」や「レ」で終われば日本の音楽のようになるからです(「ド」で終わると日本というよりスコットランドのようになります)。もう一つは、「ファ」の音が、学校によって、イギリス式(バロック)を使用している場合は指遣いが難しいためです。

このように、スリルを感じながら、みんなと即興でふしを演奏する(これは音楽づくりの初歩でもあります)、あるいは応答するためにリコーダーの指遣いが身に付いていくことになります。

また、しばしば見られる、できている子は飽きてしまう、苦手な子は諦めてしまう、ということも発生しづらくなります。

先の例のように、音を徐々に増やしていったときに、くじけそうになった子どもがいれば、随時「ここまで○個の音を覚えたね。今から、リレーをするけれど、○個以内の音でやるよ」という形にすれば、まずは自分のできる音を選んで参加すること(自らの学習を調整)ができるわけです。

ふしづくり(思考)の活動のために技能が必要となり、それはその活動を行うために、短期で身に付けるということになるという事例について述べました。