【前回の記事を読む】「勉強する意味」を感じられないのはなぜ?子供が置かれた状況にヒントが!

第1章 「楽しさ」と「実感」がある授業のために…

1-5 教科とは ── 音楽という教科

そうした背景にあって、学習指導要領の改訂は、従来は改訂に向けての作業開始当初から各教科等別4の部会に分かれて改訂に向けての作業が進められる1)ところが、第9次の学習指導要領改訂では、従来と異なり、教科等別の部会は当初からは立ち上げられずに、ほぼ10か月の間、教育課程企画特別部会という部会で、子どもたちに育成を目指す資質・能力について検討がされました2)

「学習する子供たちの視点に立ち」3)、「はじめに在来の『教科ありき』ではなく、また『内容』の習得それ自体が教育の最終目標でもないことを言明した点にこれまでにない新しさ」4)があったのです。

そのことを踏まえるならば、なおさら資質・能力を育むことに音楽科も寄与しなくてはいけないといえます。音楽を何かの目的で利用するのではなく、音楽は音楽のためにやるのだ(それならば個人内の作用となり、やりたい人が町の音楽教室に行けばいいではないかとなり、趣味と同じということになり)、音楽をやっていれば、自然に心も育つ、という在り方5)に漠然と寄りかかり切ったり、音楽をすれば心が豊かに・美しくなると漠然と思ったりしているのではなく(〈1-2〉において【表1】を交えて述べた通り、音楽の授業自体が十分に行われるとはいえない状況になる)、学校におけるお勉強であるということを明確に考慮するということです。

このことに関しては、とても楽しく豊かな音楽の授業を第一線で実践されている先生の「音楽に接するだけで心が十分に育つなら、学校でわざわざ教科として存在する価値はないのではないか」6)という明確な主張も見られます。