印刷機の回る音が規則的に響く。永遠に回るように思われるそのリフレインの中で、事務所に掛けられた大時計の長針が、その時だけカチリと明確な自己主張をして五時五十五分を指した。あと五分―あと五分で私は汚れた作業服を脱ぎ捨て、代わりにガラスの靴を履き、ネズミの馭者(ぎょしゃ)に牽かれた南瓜(かぼちゃ)の馬車に乗るお姫様になれる。馬車の行く先は巣鴨。オバちゃんの原宿なんて野暮なことは言わないで。煌めくシャ…
薔薇の記事一覧
タグ「薔薇」の中で、絞り込み検索が行なえます。
探したいキーワード / 著者名 / 書籍名などを入力して検索してください。
複数キーワードで調べる場合は、単語ごとにスペースで区切って検索してください。
探したいキーワード / 著者名 / 書籍名などを入力して検索してください。
複数キーワードで調べる場合は、単語ごとにスペースで区切って検索してください。
-
小説『薔薇のしげみ』【新連載】間埜 心響
馬車の行く先は巣鴨。汚れた作業服を脱ぎ捨て、六時七分の外回りに乗れば六時半の開演に間に合う。
-
小説『薔薇のしるべ』【第9回】最賀茂 真
バラを通して心が交わる瞬間、そして"演技"を越えた本当の声──二人の距離はまたあの頃みたいに戻れるのか…
-
小説『薔薇のしるべ』【第8回】最賀茂 真
あんなに一緒だったのに。月日が二人を分かち、別人のように見えてしまうほど残酷に時は経ってしまった。
-
小説『薔薇のしるべ』【第7回】最賀茂 真
薔薇を、私の薔薇を見ている! それほど熱心に見てもらえるなんてと、突然喜びが湧いてきて…
-
小説『薔薇のしるべ』【第6回】最賀茂 真
この日をどれほど切望してきた事だろうか。だが一方には、それを恐れる心が…。堰が切れるように、固く誓った事までも…
-
小説『薔薇のしるべ』【第5回】最賀茂 真
まだ着いたばかりなのに、今にも帰るような話になってしまったのを悲しく思った。
-
小説『薔薇のしるべ』【第4回】最賀茂 真
「泊めていただけるという事かしら?」 その声色は、本心を隠すようにしゃがれていた。
-
小説『薔薇のしるべ』【第3回】最賀茂 真
「あの手紙が届いた時、一体何の事かと思ったわ」 薔薇が断ち切られた時間を再びつなぐ…
-
小説『薔薇のしるべ』【第2回】最賀茂 真
青いシャドーに真紅のルージュをひいた友人。二十年ぶりの再会に嬉しいはずが…
-
小説『薔薇のしるべ』【新連載】最賀茂 真
庭仕事をしていると誰かが訪れた気配がして見に行くとそこにいたのは…